第13話 到着・2

流石に条件を隠されて、とは言え約束してしまった物は断れない。

と言うよりも社会人としての性だ。

信頼を失いたく無い。


「全部って…海だけじゃ無く寺とかもか?」


と一応問い掛けてみれば


「勿論よ。その寺ってのがよく分からないけれどこの木造の物を指すのならそうね。連れてって頂戴。」


きっちり寺の写真を指差して言ってくる。


更にこの特集。

地方別とかでは無く本当に日本全土の観光地についてまとめてあるから彼女の要望に答えるならば日本全土、冒険しなければならない。


それは少しどうかとは思うし…壊れている家なんかを見るととても寺や神社が全て余す事無く残っているとは思えない。

だからこそ止めるかと言われれば止めはしないが…正直不安要素だらけだからこその葛藤だ。


「はぁ…分かった、分かったから連れてってやる。ただし、道中の怪我なんかは覚悟してくれよ。

このモンスターだらけの世界。無事に観光とは行けない筈だ」


「分かってるわよ。そんなの、むしろそっちの方がしっくり来るわ。前と同じだからね。」


と自身満々に返ってきた。

まあそこを約束さえしてくれれば何も言わない。


「それじゃあ当分の目的は観光地巡り、か。

なら益々情報が欲しいな…気は進まないが学校に戻るか。」


「そうね。何の情報も持たずに出歩くのは危険だわ。取り敢えず人から話を聞きましょう。」


と言えば彼女は雑誌を俺に収納する様にせがみ、収納させられた。

俺は便利屋じゃ無いんだぞおい…



コンビニを出た俺らが向かったのは先程言った通り学校。

面倒な予感しかしない物だが行くしか無い。

一番近い人の集う場所はそこしか無いのだから。


校門の前に着けば先程とは違い、人が本当に最近出入りした形跡があった。

門が少し閉じきっていなかったのだ。

俺らはきちんと閉じたし、多分さっきの奴らが焦ってたせいできちんと閉めなかったんだろ。


そして校門を開け、昇降口を入る…前に昇降口の出入り口の隣、そこに2人程の気配があった。

単に休憩とかそう言うのじゃなく、武器を構えて立っている。

それをサヤカに小声で話せば


「あら、盗人とでも間違えられたのかしら。取り敢えず、知らないふりして入りましょう。それで武器を向けられらは対処する。それで行けるわ。」


と何とも頼りになるのか分からない意見が出された。

確かに声を掛けても余計警戒されるだけだろうしそれが手っ取り早くもあるか。


考えを纏め、何も知らないかの様に昇降口に入れば男2人が


「おい、大人しく持ってる物を全て出せ。」


と片刃ノコギリを俺の首に、もう片方の男がサヤカの首にカッターナイフを突き付けていた。


これは盗人と勘違いじゃないな。

コイツら、学校に来た奴から身包みを剥いで生きながらえてやがる。

胸糞悪い…手慣れてる様にも見えるから今までも何人かやって来てるんだろうな。


躊躇いも躊躇もなく、こんな事が出来るのは余程慣れた人間…だと何処かで聞いた。

こんな状況でも冷静な思考が出来る自分も相当だろう。


取り敢えず処理しますかね。

とサヤカの方に眼をやると彼女も思ったのか、此方を見ていた。

なので示し合わせた様に、俺と彼女は同時に行動を始めた。


俺はノコギリを折るのは可哀想だと思ったのでノコギリを奪う…事は素人の俺に出来る訳でも無いのでシュバルツに任せる。


すると籠手が後ろに引っ張る様にして後方に体を逸らさせて刃と距離を離せば倒れた勢いを利用する回し蹴りで男の腕を蹴り上げ、ノコギリを落とさせ、踏む事で無力化した。


彼女の方は懐に手を当て、素早く連節棍の形態の棍を抜き、カッターナイフの刃絡め取って折り、その棍の先を相手の首に突き付けていた。


さて、コイツらはどうするか…

と言うよりもまずは情報を抜き取るのが最善だろう。

一瞬で2人を無力化した俺らを何か、怯える様な目で見てくる男2人に問い掛ける。


「なあ、お前らは今、何を知っている?」


問い掛けの内容を聞いた2人はポカンとしていて、何故だか滑稽に写った。


「は…?いや…え?何を…って、今の日本について、か?」


と片方の男が答えた。

肯定する様に頷けば男は


「俺らが知ってるのはただモンスターが今朝唐突に出て来たって事くらいだ!それ以外には何も知らない!」


と迫真の様子で言ってきた。


「…反応を見ると嘘を言ってる様には見えないわ。どうする?そんなの誰でも知ってるくだらない情報だけど」


「まあ俺もそう思うし…それにコイツらのやった事を考えると生かす価値無しとして殺す…てのもありっちゃありだが気が進まないしな…」


さて…どうするか…

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