第12話 打ち合わせ

──────── サヤカside─────────

…何か変なスキルがあったが気にしない事にした彼女はステータスをそっと閉じ、コンビニの中をもう少し調べて見ることにした。


コンビニと言えば何を思い浮かべるだろうか、それは食品だけでは無く雑誌や文房具など、多岐に渡る。

当然、見覚えの無い物に興味を持つだろう。

彼女はその中で雑誌を手に取った。


その雑誌は週刊誌、丁度観光地の特集の記事。

字は分からない。あまり意味も分かっていないが、彼女は写真、その特集に写る複数の場所に見惚れた。

それで彼女は食い入る様に雑誌を見つめていた。


─────────井為瀬side────────

「さて、話す事にも失敗したし、戻るかね。」


そんな事を考えながら俺は彼らを追わず、コンビニの方へ向かっていた。

彼らは向かった場所はどうせ学校だろうと憶測が付く。

ならば今は彼女を回収するのが先決だろう。


と思い向かっていたのだが…気配察知に反応が三つ。ゴブリン…とは少し違うが人間でも無い。

新たな魔物か?

なら少し実力を見る体で近づいてみるかと思い、近づくと居たのは狼。

そう、ゴブリンライダーが乗り回していた狼だった。


その狼達は何かに群がり、一心に食べている。

恐らく死体だろう。

と思えば吐き気が込み上げるが、呑み込む。

こんな場所で吐けば感づかれるだろうしな。


身を低くし、腰の鞘から剣は抜かず、柄に手を掛けたままに進む。

すると狼達は顔を上げ、此方に気づき、走り飛びかかってくる。


それに軽い悲鳴を上げそうになるが押し留め、剣を抜こうとするが上手く抜けない。

刀でやる居合を直剣でやるのは無謀だったのだろうか。それとも素人だからか?


と思い焦ると籠手が勝手に動き出す。

シュバルツサポートだろう。

先程の拙い抜刀とは違う、流れる様な抜刀をし…た訳でも無く鞘ごと腰から抜き、一番接近して来ていた狼を殴り飛ばすと鞘から刀身を抜き、後続の二匹を横に薙ぎ一閃、両断しては返す刃で殴り飛ばした狼が復帰し、また飛びかかってくるところを突き刺す。


これで終わりだ。

流石シュバルツ。剣技は素人の俺を軽く凌駕する。

当たり前だが…それでも主として悔しい物はある。

側から見れば鎧が動く事なんて分からないから俺の実力に見えてしまうがそれは無い。

シュバルツが居なければ俺はただの一般人だからな。


…っとと、こんな思考を繰り広げる暇はなかった。

早いうちに迎えに行かなければ。



「おいサヤカ!迎えに来たぞ!」


とコンビニに着けば一声掛けた。

が返事が無く不安に思い店内を覗けば彼女は居た。


入ってすぐの雑誌コーナー、そこにある雑誌を食い入る様に見つめていた彼女が。


「おいサヤカ、何やってんだ?」


と近づき声を掛ければ


「…え?うわっ、ちょ!?」


俺が近くにいる事に気づきビックリしたのか狼狽えては見ていた雑誌が音を立てて床に落ちる。


俺はそれを拾うと

「んっと…これは?…観光地特集?」


「あ、ちょ…私が見てたんだけど?」


と彼女が焦って取りに来るので彼女の手にその雑誌が奪われてしまう。

いや、落としたのを拾ったのだから奪ったのは俺だろうか…

こんなどうでも良い思考をする最中、彼女は言ってきた。


「ねぇ、この場所、知ってる?」


と聞かれ、雑誌の一部分、丁度海を撮った写真を指さしていた。


「え?まあ知ってるけど…それがどうした?」


「見たいのよ。この景色を直接ね。」


と言ってきた。確かにその海は綺麗だが…

果たして変わった世界の中で今も綺麗さを保っているのか…俺にはわからない。


「いや…その景色が今でも見れるか分からないけどまあ…それでも良いなら行けば良いんじゃないか?」


「アホね。何故私がこれを知ってるか聞いたのか分かる?案内よ案内。まさかこんな女の子をほっぽり出して勝手に行けと放り出す事はしないでしょう?」


それは盲点だった。

確かに彼女は此処ら、いやこの日本の地理を知らない上に文字では無く、写真を指したところを見ると文字も読めるか分からない。

そんな彼女を行けばと放り出すのは些か良心が痛む。


「それじゃ、俺にも着いてけと?断る気は無いがそこに行くまで、だからな。それさえ終えれば俺は安寧を求める。」


「何言ってるのよ。他にもこの様な景色はたくさんあるのでしょ?当然、それらも見たいわ。全て、連れて行きなさい。」


…長い旅になりそうだ。

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