第7話 衝撃の事実

「はぁ?何言ってるのよ。ゴブリンなんて魔物の中でも最低辺の魔物よ?それ以上のがゴロゴロ居たっておかしく無いじゃ無い」


…は?あんな悍ましい奴以上の奴がゴロゴロと居る?彼女の話を信じるならばゴブリンは最底辺…いや、ファンタジー小説でもゴブリンは最底辺な事が多いからなんとなく予想は出来ていた。

だがあれ以上の奴が来て人は生き残れるのか?

そんな思考が駆け巡った。


「あら?どうかした?そんな思い詰めた顔して」


そんな少女の問いのお陰で現実に突き戻された。

そして俺は彼女に詳しい話を聞こうと思ったがそこで気配察知に反応があった。

そう、ゴブリンだ。だがゴブリンと一緒に感じた事の無い何かも感じる。

というよりもゴブリンの気配と重なっている…のか?



その気配を感じて俺は重なる気配に疑問を覚えたがすぐに武装する事になる。

何故か?それは簡単だ。少女が紅の斧を構えていたからだ。


あんな少女すらも武器を取り戦おうとしているのだ。

大人の俺が逃げ出す訳には行かない。


「ほら、アンタは逃げなさい、見たところ武器も持っていない様だし。体を見てもとても武闘家とも思えない。さっきのの虚勢は許してあげるから逃げなさい。今なら間に合うわよ」


「こんな子供が戦うってのに逃げられるかよ…ほんと。俺も戦わせてもらうぞ」


と言ったところでシュバルツ召喚。

先程の光と同じ物が出てきて少女がこちらを見て驚いてる顔が見える。

だが今はそんな事関係無い。

目の前の敵を倒すのが、最優先だ。



「グギャア!」


とあのクソッタレなゴブリンの声が聞こえる。

もうすぐそこまで来ているのだろう。


「ギャア!」「バウッ!」


とゴブリンの鳴き声に混ざって犬の鳴き声まで聞こえてくる。

まさか…いやこんな序盤に来る様なのじゃ無いし多分無いだろう…。


「ッ!…ゴブリンライダー!?何でこんな場所に!?更にこの数…あぁ!もう!」


と少女が叫ぶ。

当たって欲しくなかった考え、当たったか。

重なってる時点で察しておけば良かった。

ゴブリンが何かに乗っていると言うことに。



ゴブリンが乗っているのは大型犬よりも一回りほど大きな犬だった。ゴブリンを乗せて高速で動くその様は犬というよりも狼を思わせる。

そのゴブリンの手には俺が倒したやつとは違い先端を鋭く尖らせた木の枝を持っている。

そして何よりも特筆せねばいけない点はその数。

おおよそ10は居るだろう。



俺らはたった二人でこいつらに勝てるのか、そう考えていると少女がゴブリンの方に駆け出した。


「見つかった以上はやるしか無いわね…あぁ!ほんっと面倒臭い!」


斧を振るった。がゴブリンには当たらなかった。

犬が動いてスレスレで避けていたからだ。

当然乗っているゴブリンにも当たらないだろう。

そう思った時だった。

紅の斧から爆炎が吹き出してゴブリンを焼いたのだ。


「…は?」


口からそんな言葉が零れ落ちた。

当然だ。斧から突然炎が噴き出るのだから。

こうして俺とゴブリン達が呆然としている間にも少女はゴブリンに刃を振るう。

2体目のゴブリン焼きが出来上がった。



だがゴブリン達もこれ以上ただではやられず我に帰った。

きっと数で攻めれば勝てると思ったのだろうか。

次々とあらゆる方向からゴブリン達が少女に襲い掛かった。

だが彼女には一切掠りもせず空を切る虚しいゴブリンライダー達の突進。

彼女の脚はまるでステップを踏む様に軽やかに、そして軽快に動いて位置を変え続けていた。

そして炎を纏った灼熱の斧を突進で空中に居る隙だらけのゴブリンに叩き込む。

その斧の軌跡には紅い、炎が残っていて、それが綺麗にゴブリンを縫う様に通っていくのだ。

もはや一種の芸術と言っても良いだろう。

少女が舞う様に跳び、その周りを紅い、炎の軌跡が残る。

とても幻想的な光景だった。



「ふぅ…まぁ、こんな物ね…でも、何故かしら…」


俺が呆然としている間に彼女はゴブリンを狩り終え、一息ついていた。


「お、お疲れ様…」


俺が引き攣った様な声で声を掛けると彼女は


「ん…?あら、貴方逃げてなかったの?」


動きが無かったからてっきり逃げたのかと。


そう付け足して彼女は返答してきた。


「いや…戦おうと思って構えてたら君の戦いに目が離せなくてね…それに、君が全て相手取ってしまっただろう?」


「まあ…そうね。でもおかしいわね…私の力は本来こんな物じゃ無い筈なのに…」


その言葉を聞いて俺は絶句した。

何せあんな数のゴブリンライダー達を圧倒した彼女はまだ本気を出してないと取ったからだ。


「あ、いや。違うわよ?私はこんなに強く無かったって意味で言ったのよ」


あ、そう言う意味か…

いやなんで彼女の力が強くなったんだ…?


「ん…じゃあ何故強くなったんだ?」


「それが分からないから困惑してるんじゃ無い。それも分からないの?」


あぁ、まあそうだよな。うん。

というか強くなったのならステータス見れば分かるんじゃないのか…?

と彼女に言うと


「何言ってるのよ。ステータスなんて鑑定器具が無いと見れない物よ?鑑定器具が一体何処にあるって言うのよ」


…あれ?じゃあ俺は何故見れるんだ…?

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