第23話 幕間:悪友とぼく
「お」
「ひさしぶりー」
電車内で偶然会ったのは、小中高と腐れ縁の悪友だった。通勤で利用している電車が同じなので、たまぁに顔を合わせることがあるのだ。
「最近どーよ」
「ふつー」
このやり取りも、いつものこと。友達に報告するようなことなんて、そうそう起こるわけもない。ぼくのほうはそう思うのだが、彼はいつもぼくにこう聞いてくる。
「例の彼女とも変わりないわけ?」
「……」
ないよ、と言おうとして、思わず口ごもる。この間の一件以来、既読スルーが続いているのだ。
そしてこの彼は、その躊躇いを見逃してくれるやさしさなど持ち合わせてはいないのである。
にやぁ、と、いいおもちゃがあるじゃないかと言わんばかりの笑みを浮かべて、僕の顔を覗き込んでくる。
「お、なになに? ついに変化が? ふられたの?」
「まだふられてないし……」
「まだ、ねぇ……時間の問題?」
「……自然消滅するかも」
「いやー、それはないっしょ」
ぼくの小さな不安を、彼はあっさり否定した。いやまぁ、たしかに自然消滅はないだろうけど、当たり障りのないように関係になってしまうことだってありうるのだ。
ぼそぼそとつぶやいた僕を、ふふんと鼻で笑う。
「ないない」
「……その根拠を述べよ」
「根拠もなにも」
彼は小さく肩をすくめた。
「オレがどんだけキミたちに振り回されたと思ってんの?」
振り回した覚えなんてないけど。
「そう簡単に終わるなんて、オレが許さないから」
終わるのに許しなんて必要ないし。
「だからとっととふられてこい」
「いや、ふられたら終わっちゃうよね!?」
思わずツッコむと、はっはっは、と似合わない明るい笑いをこぼした。
「おまえの場合、ふられてからが本番だろ?」
まぁ……そうかもしれない。まずは意識してもらうところからだもんなぁ。
「どうせ切れない縁があるんだから、あたってこいよ」
「……そうだね。今度待ち伏せしてみるわ」
「わぉ、ストーカー宣言。にげてー」
どっちの味方なんだか……。
うん、でも。
吹っ切れたわ。
後ろ向いてるのもつまらないし、なによりキミに会いたい。
待ってろよ!
でも、一応予告だけはしとこうかな。ストーカー呼ばわりされるのはイヤだしね、うん。
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