第13話 デザートは別腹ではない

「お腹空いてるときって、つい注文しすぎちゃわない?」


 キミの問いに、ぼくは首を傾げた。あいにくとそんな経験はあまりない。むしろ腹八分目で収まるくらいしか、いつも注文しないんだよね。


「なんか、アレも美味しそうコレも食べたい、って考えて、今なら大丈夫!って思っちゃうの」

「うん、まぁ、そういうこともあるかもね?」

「でも、実際の食べられる量って、お腹空いてるからって増えるわけないじゃない?」


 ファミレスのテーブルの表面を見ながら、キミの言葉は続く。


「で、いつも、あーしまったなぁ、って思うわけ」

「そうだね。いつもだね?」

「そうなの……」


 えへへ、とキミが笑う。わかってるのに、どうしていつもこうかなぁ?

 テーブルの上には、キミが食べられると過信して注文した料理がまだ残っている。といっても、たくさんというわけではなく、ぼくが食べられる範囲の量だ。


「いつもありがとう……」

「うん、まぁ、次から気をつけようね」


 残った料理を片付けながら、何度目かになるやりとりを繰り返す。キミの言葉を借りれば『今回は大丈夫!』とでも思うのだろうし。

 これを踏まえて、少なめに注文するようになってしまったぼくにも、キミの悪癖が治らない原因があるのだろうし。しかも、好みが似てるのか、ぼくも食べたかったやつ注文してたりするから、止めにくいんだよね……。

 料理をすべて片付け、伝票を手に取ると、キミが慌てて立ち上がった。


「私が払う!」


 伝票を取ろうと手を伸ばしてくるのを避け、空いている手で額を小突く。


「高校生が何いってんの。ここはお兄さんに奢られておきなさい」

「だって、いつも奢ってもらってるし……」

「いいんだよ。キミが社会人になったら、奢ってもらうから」


 ぐしゃぐしゃと頭を撫でてやると、不満そうに乱れた髪を整えながらも、どこか嬉しそうに見える。

 こうしてご飯を一緒に食べる機会が、まだまだあると知って、安心したのだろうか。そうだったら、嬉しいのだけれど。

 キミのことだから、自分から言い出したけどお小遣いが減らなくてよかったとでも思っているんだろうな。

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