第8話 ネギとメンマ
近所のラーメン屋では、塩ラーメンがキミのお気に入り。ちょっと柚子の風味がするところがイイらしい。
日曜日のお昼、ラーメンを食べに来て、新メニュー美味しそうとひとしきり迷ってから、結局いつもの塩ラーメンを注文する。ぼくは味噌ラーメンのチャーハンセット。
ラーメンが来るまでの間、キミはふと思い出したように話しだした。
「この間ね、学校の友達とラーメン食べに行ったの」
「学校の近くのとこ?」
「うん。でね、ふつーにラーメン頼んで、きたときに、あ、って思ったの」
タイミングよく、ぼくたちが注文したラーメンもきた。パキンと割り箸を割り、レンゲを手にとって、キミはため息をつく。
レンゲの上にネギを乗せて、ぼくのラーメンの上にどさっと移動させる。
「いつもこうやるから、ネギ抜きを注文すればいい、って考えないのよね」
「あーわかる」
お返しに、ぼくも自分のラーメンからメンマをキミのほうに移動させる。
いつのころからか、こうやって自分の苦手なものをトレードするようになって、注文するときに悩まなくなったのは確かにある。
いつも一緒ってわけでもないのに、不思議なものだ。
「そのときは、ネギどうしたの?」
「こう…」
言いながら、ラーメンを軽くかき混ぜる。
「さりげなーく、下の方にまわしたよ」
「それ、絶対さり気なくないから」
言いながら、ぼくもキミがいないときに同じことをしたなぁと思い出す。さりげなーく、メンマを下の方に……。
そう、全然さり気なくないことを知っているのは、容赦ない友達に指摘されたからだ。
キミの友達は優しいから、指摘しなかったのかな。まぁ、ぼくの友達も、ベクトルは違うけど優しいんだけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます