第6話 エイプリルフール
「私、カレシができたんだ」
キミの言葉に、ぼくは思わず固まった。
それはまぁ、彼氏なんていつできたっておかしくはないのだろうけど、いささか急すぎやしないだろうか。ここしばらくは、あの先輩がカッコいいとか、隣のクラスの子の笑顔にキュンときたとか、そんな話はしてなかったと思うのだけれど。
いやでも、告白されてその気になるとか、有り得そうな気もするし……。
などとぐるぐる考えていたが、キミの顔を見て思い直した。
うん、これはウソだな。
あの笑顔は、彼氏ができて浮かれている顔じゃあない。うろたえているぼくを見て、ほくそ笑んでる顔だ。
確かに今日は4月1日だ。嘘をついてもいいのかもしれない。
だけども。
「知ってる? エイプリルフール、嘘をついてもいいのは午前中だけって話があるよね」
一部の国では適用されているルールだ。日本でも最近は言われてることだけど、まぁ絶対のことではない。
けど、根が素直なキミは、目に見えてうろたえた。
「え、え? そうなの? どうしよう、嘘ついちゃった……」
そんなに気にすることでもないのに、キミは困った顔をする。
だからぼくは、一つ助け舟を出してあげたのだ。
「簡単だよ。嘘じゃなくすればいいんだ」
つまり、実際に彼氏を作ればいい。
理解したキミは、パッと顔を明るくして立ち上がった。
「そっか、そうだよね! じゃあ、ちょっと出かけてくるね!」
言って、ぼくが止める間もなく、家を出ていってしまった。
えっと。
わざわざ出かけなくても、ここに手頃な彼氏候補がいたんですけどね……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます