第4話 キミと黄身
今日はとても寒い日で、キミはコンビニでおでんを買うのだと言い張った。
寒いなら早く家に帰るべきだと思うのだけど、おでんを食べれば暖まるというのがキミの主張だ。
かくして、おでんを買ったキミと、缶コーヒーを買ったぼくは、さむぅい公園のベンチに並んで座った。
「やっぱり雰囲気って大事よね」
つまり、寒空の下コンビニで買った温かいおでんを食べる、というシチュエーションが大事だというわけだ。
パキリと割り箸を割って、大根を一口サイズに切って、満面の笑みで食べている。平気で口に入れているところを見ると、もうぬるくなってしまっているのかもしれない。
パクパクと大根を口に運んでいるキミを見ていると、ふとぼくの方を向いて首を傾げた。
「たべる?」
「いや、ぼくはいいよ」
「待ってね、たまご、半分あげるから」
いらないって言ってるのになぁ、と思いながら、キミの手元を見ると、黄色いブツがぼくに突き出された。
「はい、あーん」
「って、黄身だけじゃん!」
「半分にはかわりないでしょ?」
「黄身をキライなだけじゃないか……」
ええぇ……これも半分って言うの……?
ずいっと差し出された黄身をパクリと食べる。黄身だけ食べるのって、ハードル高いと思うんだけどね……。
コーヒーを買っておいてよかった、とぱさぱさになった口の中を潤す。食べ合わせとして味はまぁちょっとアレだけど、贅沢は言うまい。
ちょっと甘やかしすぎてるのかなぁ、と思った、冬の日のこと。
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