④ドラゴンロード

 ガチャによるパワーアップを済ませ、レギュラーとも新たに交友を温め合う中で、俺たちに新たなミッションが下された。


 それが素材合成ガチャによる日本食の再現。

 要は、異世界の飯に飽きたとのお達しである。


 ガチャによる調理は新たな項目【魔素】を経て進化する。

 なんと調味料までできてしまうぶっ飛びチートにパワーアップしてしまったのだ!


 ミルクをガチャに突っ込んで、魔素を消費すれば何故かバターやヨーグルトになる。

 そんなチートを知ったクラスメイトの欲望はのダムは崩壊した。


 俺たちの冒険者生活は、お金集めよりも素材集めがメインとなる。しかし同時期にいつもの森への採取依頼が全くない。

 どうも山の上、森の奥深くのモンスターが浅いところまできてしまい、生態系が乱れまくっているとのこと。


 依頼に乗じてモンスターを駆逐しようと考えていたのに当てが外れてしまった。

 まぁ、ギルドの許可が降りなくたって勝手に入るんだけどな?


「阿久津君! この蜂、蜜蜂よ!」

「よーし回収!」


 蜂は蜂の巣ごと回収。ロイヤルゼリーと蜂蜜がたっぷりだ。

 なお、兵隊の方は魔素変換が美味しかったので根こそぎとった。

 っぱ、ステータスの暴力は最高だぜ!


「雄介、この熊は絶対捕まえて。漢方薬の材料になるから」

「よーし回収」


 あとは手当たり次第に回収した。

 何に使えるかなんて後回しだ。

 今日という素材フィーバーを見逃してなるものか、という気持ちで突っ込んだ。


 ギルド?

 知らない子ですねぇ。

 行きつけの露天商に素材を持ってったら心配されたっけ。

 まぁ高品質素材を確保する金蔓だからな。

 心配するのは入手予定の金の方だろうが。


 その日のデザートは豪勢になったのはいうまでもない。

 しかし俺たちの知らないところで、最悪の事態が動いていた。



 ◇◆◇


 ギルドはいち早くそれを察知し、国に救命活動を送っていた。

 伝令の声に国王は渋い顔。

 大臣も20年前を思い出して沈痛なお面持ちだ。


「来たか、早すぎる」

「あの国にとって我らは所詮玩具に過ぎぬと、そういうことですな」

「何の為の、勇者大戦か」

「全くです」


 握った拳に血管が浮き上がる。

 眉間の血管もぶち切れそうなほど、冷静さを欠いていた。

 言葉の通り、これは相手国からの宣戦布告。

 これをやり過ごせねば次はない。

 文字通り、滅亡だ。


「ミカミの成長はどうだ」

「6000と言ったところですな」

「ぶつけて勝てると思うか?」

「無理でしょう、時間稼ぎになれば良いくらいかと」

「話の通じる相手と思うか?」

「宣戦布告もなしに国境を超えて襲撃を仕掛けてくる相手です。取り合うかどうか……」

「ならば今一度選ぶのか、贄を」

「その為の補欠です」

「ミカミは逆上するだろうな」

「尊い犠牲です。守れぬのは、己の力不足ゆえ」

「犠牲の上に立つ平和に何の意味がある」

「ですが、選ばねばなりません」



 ◆◇◆



 で、俺たちが選ばれたらしい。

 伝令を伝えてくれた兵隊さんは、どうせ無理だろうとこっちの要求を概ね飲んでくれた。

 素材は全部俺たちが持って帰っていいのか? そう言ったらOKだ。まず間違いなくNGだろうに。

 それくらい戦力差は絶望的ってことね。


 しっかしドラゴンねー。

 魔素どれくらいあるんだろう?


 俺たちの興味はそこに尽きる。

 ステータス?

 ガチャを回せば上がるしなー。


 だから魔素は最低1000、いや5000は欲しい。

 なんせあいつらの欲望は底が無いんだよ。

 俺のガチャは素材ありきだっつってんのに、ガチャを回せば無限に出ると思ってやがる。だから魔素は多いに越したことないってわけ。


 で、出て行った先で肝心なことを聞くのを忘れてた。


「問題のドラゴンはどこいんの?」

「さぁ?」

「そこを普通は聞くのよ」

「一番騒がしいところを探すのはどうでしょうか?」

「「「それだ!」」」


 そんな感じでゆるーく始まったドラゴン退治。

 そこで俺たちは運命的な出会いを果たす。


 過酷な運命を背負った少女アリエル。

 彼女はその目を復讐に染め上げ俺たちの前に立ちはだかった。

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