第10話 彼女との別れ
今日は8月1日。
俺は志津駅にいた。
彼女が乗る電車を見届けるために。
あの春の日から彼女の事が好きだった。
彼女の事を知る度に好きになっていく俺がいた。
叶わないのだと決まっていたはずなのに。
途中から「叶わないだなんて無いのかな」と思った。
告白だってしたかった。
勇気が出なくて出来なかった。
俺はビビりだ。
桜に告白して、桜との関係を壊すだなんて思っていたから。
これは最近知った事で、親が転勤族ですぐに転校してしまうみたいだ。
でも佐倉市には二年居られたみたいだ。
これは運がいい方らしくて、悪かったら半年しかいられないみたいだ。
今の佐倉の空には花火が打ち上がっていて、綺麗だ。
でも今日の日に限っては儚い。
桜が消えてしまうのは俺にとって失恋を意味する。
苦しいけど仕方がない。
「なあ、和樹。 桜にもう1回会える日は来るんだろうか」
俺はそばに居る和樹に話しかけた。
「きっと来る。 どこにいても桜はきっと俺らの事を忘れない」
和樹は優しく俺に言ってくれた。
「そうだよな帰ってくるよな。 帰って来たらまた新町通り行こうぜ」
「だな。 もうすぐ出るぞ」
そして電車が出る。
俺らは手を振る。
白いワンピースを来た彼女はどこか切ない表情をしていて、俺は切なくなる。
最後は笑顔だと決めたのに。
こんな俺、馬鹿みたいだ。
電車が過ぎ去った。
俺は別れを自覚して泣く。
その横で和樹が俺の背中をさすってくれている。
その後の記憶は覚えていない。
苦しくて悲しかった事は覚えている。
また会える時は来るのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます