第5話 鬱陶しい季節の到来
6月、梅雨の季節になった。
外は雨が続いていて、湿気が多いから室内はジメジメして暑い。
俺はまたあの日の様に、外を眺めていた。
俺の耳元で聞き覚えのある声がした。
それは桜の声だ。
「やりたい事も出来ないしさあ…。 つまんないやあ」
彼女は悲しそうに呟いた。
彼女の顔は悲しそうだった。
「そうだねえ…。 でも7月になったら梅雨が明けるからそこまで我慢だよ」
俺は憂鬱そうに桜に言った。
桜は笑っている。
「何、憂鬱そうにしてんだよ悠希!!」
でかい声が耳元でする。
相変わらずうるさい声だからかビックリする。
少し声の音量を自重してくれないものなのか森谷は…。
「森谷、あのなあ…耳元で叫ぶんじゃねえ!」
俺は森谷にイライラしながらそう言った。
桜がいるから声は荒らげたくなかったのだけど仕方がない。
桜、許してくれよ。
「ごめんよ〜。 今度菓子でも買ってやるからさあ」
森谷はそう言うけど、菓子で済んだら謝罪はいらねえ…。
でも許してやんなきゃ行けねえから菓子で手でも打ってやるか。
「ああ…そうしてくれ」
「あいよ〜」
そういうと、森谷は去る。
あいつって、何かしらやらかして消えるからなあ…。
「大丈夫だった? あいつ小学生時代からああだからさ」
「桜のお陰で落ち着いた。 ありがとうな」
「いいんだよ」
そう言うと桜は、自分の席に戻る。
また桜のことを好きになってしまった俺がいた。
叶わない恋なのに。
俺は桜のことを考えることをやめて、授業の準備をすることにした。
この恋はきっと実らない。
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