バブみ道日丿宮組

お題:臆病なエデン 制限時間:15分

 約束された楽園。

 そんな空想に惹かれてしまうのは、きっと現実が認められないから。ボクが1人だから。

 かつて楽園を作り出した神様はいったい何を楽しみに生きてたのだろうか。もしかすると感情すら持たない機械だったかもしれない。

 人間は不完全な生物で、誰かを必要とする。 

 そんなことはわかってる。ボクにはただ無理なんだ。

 コミュニケーションができないとかそんなレベルじゃなくて、他人に何かを要求することが出来ない。相手の要求に対応しうる能力がまずボクにはない。

 周りに溶け込めないなら、孤独の中でも楽しめるものが欲しかった。

 学校はつまらない。

 世間話も結局は外の話。手の届く話じゃない。TV番組なんて遭遇しないエリア。秘境に近い。ボクがそこに入り込む余地も、願望もない。

 なら、やっぱり日常で楽しめることを探すしかないのだけど……。

「……」

 教室の中は雑音に包まれてそんな気分にもなれない。

 授業の予習と復習、その作業に明け暮れる日常。おかげで誰からも視線を浴びることもない。クラスでトップになろうが、学年主席になろうが彼らにボクは映らない。

 異質な存在は、異質としてインプットされる。

 ボクが入ろうとしない限り、こじ開けるのは不可能。開ける気もないけど。


 授業がはじまっても、ボクが教師にあてられることもない。

 つまらないから。

 ボクにあてれば、なんでも当てる。

 それは教師にとっては不幸らしい。

 学校に入った時は集中してあてられた。難題と思われる問題もいくつかあった。そこからボクに溶け込んだのは、驚異という恐れ。あいつは頭がオカシイというレッテル。

 そうして、学校という場所は壊れた。

 あるはずもない楽園を生徒に与え続ける。

 普通の普通ーー当たり前のセカイを維持するために。

 セカイは臆病だ。

 他人と違う自分がいると否定する。

 何も間違ってないと思う。

 ボクがボクじゃなければ同じになってた。

 ただ……それでもボクは自分が楽しめる何かが欲しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る