第3話

「それにしたってさぁ、ネーミングが安直過ぎると思わない? これって絶対制作者サイドの手抜きよ手抜き!」


「はぁ...そうなんですか...」


「だってそうでしょ? ヒロインだからヒロウィンってなによそれ!? ハロウィンかっての! そんで私なんかアクンジョよ!? 酷くない!? どこのドロ○ジョ様なんだって話よ! ボヤッキ○やトンズラ○はどこ行ったのよ!」


「そうですね...」


 私は取り敢えず肯定することにした。早く終わって欲しいから...


「攻略対象者なんてもっと酷いわよ! 王子の名がプリーンスで宰相子息の名がインテーリ、騎士団長子息の名がノーキンで魔道騎士団長子息の名がマジーカルよ! とんだけ手を抜いたら気が済むのよ! 伸ばしゃいいってもんじゃないわ! オマケに最後の義弟の名はブラザーよ! まんまじゃない! 少しは捻れよ! あなたもそう思うでしょ!?」


「そうですね...」


 なんかもうどうでも良くなって来た...


「制作者サイドの手抜きはそれだけじゃないのよ! なんとこのゲーム、攻略対象者が5人も居るのに、悪役令嬢は私一人なのよ!」 


「それはおかしいことなんですか?」


「おかしいなんてもんじゃないわよ! 有り得ないことよ! 普通はね、攻略対象者と同じ数だけ悪役令嬢が居るもんなのよ! まぁタマには1人の悪役令嬢が複数のルートを担当することもあるけど、それだってせいぜい2つか3つよ! 5つ全部なんて前代未聞なのよ!」


「そりゃ大変だ...」


 何が大変なのか知らんけど...


「そう! 大変なのよ! 死亡エンドフラグが5つもあるってことなんだから!」


 なんだか穏やかじゃない単語が出て来たぞ!?


「死亡エンドフラグってなんですか?」


「読んで字の如くよ! あなたがどのルートに進んでも、私には死が待ち受けているのよ!」


「えぇっ!? 私のせいなんですか!?」


 ビックリだよ!


「違うわよ! あなたは何も悪くない! 悪いのはあなたを虐める私なんだから!」


「えぇ~...」


 いや、そんなにキッパリと言い切られても...


「だから死亡エンドフラグを回避するためにも、ルートの確定が大事になってくるのよ! ルートさえ分かれば回避するように行動できるでしょ?」


「分かったような分からないような...要するにルート云々関係なく、その死亡エンドフラグってのを回避するのに必要なのはたった一つしかないんじゃないですかね?」


「というと?」


「私のことを虐めなきゃいいんじゃないんですか?」


「......」


 あら? 沈黙しちゃったよ。

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