第2話

「これも入学してちょっと経った辺りね。あなたは階段を登っていた時、コケて転がり落ちそうにならなかった?」


「なってません」


「その時、前のめりに倒れちゃったもんだから、スカートが捲り上がっちゃって『あら見てたのね!』なんていうラッキースケベな展開には」


「だからもう...ラッキースケベはいいですから...」


 私は段々疲れて来た...


「魔道騎士団長子息ルートでも無いのね。じゃあ最後に」 


「やっと終わるんですね...」


「これも入学してちょっと経った辺りね。あなたハンカチを落とさなかった?」


「落としてません」


「本当に!? 名前と学年とクラス名が書いてあるハンカチよ!?」


「小学生じゃないんだから...そんな持ち物全てに名前入れるなんてことしませんよ...」


「そうなのね。じゃあハンカチを落として『これ君のだろ? 落としたよ』なんていうベタな出会いとかは無かったのね?」


「ありませんが、最後だけラッキースケベは無いんですね...」


「あら? ラッキースケベな展開が良かった?」


「いえ、どうでもいいです。というよりラッキースケベな展開ってなんなんですか...」


「義弟ルートでも無いとなると...まさかあなた! 逆ハー狙いなの!?」


「また訳の分からん単語が...結局どういうことなんですか? 一体全体なにを確認してるんですか?」


 私はイライラして来た。


「何をってこの世界のことよ」


「世界!?」


 なんか大きなことを言い出したぞ...


「えぇ、この世界はね、乙女ゲームの世界なのよ!」


「乙女ゲームってなんですか?」


 次々に訳の分からん単語が...


「恋愛シミュレーションを楽しむ世界、つまり疑似恋愛を楽しむ世界なのよ!」


「はぁ...そうなんですか...」


「なによその反応!? あなた信じてないわね!?」


「信じるもなにも...なにがなんだか...」


 混乱の極みなんだが...


「いい? この世界が乙女ゲーム『ヒロインさえ居ればいい』の世界なのは間違いないのよ。その証拠にね、この学園の名前は『リリカル魔法学園』でしょ?」


「そうですね」


「まさしく乙女ゲームの舞台なのよ! そして私は悪役令嬢のアクンジョ公爵令嬢で、あなたはヒロインのヒロウィン男爵令嬢なのよ! そうでしょ?」


「はぁ...確かにヒロウィンですけど...」


「ほらね? そのピンク髪を見た瞬間、すぐ分かったわ! 悪役令嬢は私のように金髪縦ロールで、ヒロインはピンク髪って決まってるのよ!」


「決まってるんですか...」


「永遠不変の法則なのよ!」


 私は頭が痛くなって来た...

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