【1000字小説】化け猫の怪談~とある録音音声から~

八木耳木兎(やぎ みみずく)

短編【化け猫の怪談~とある録音音声から~】

 ―今回は今を時めく猫系アイドル、有馬禰子さんの怪談をお聞きしたいと思います。

「呼んでくれて嬉しいにゃ。今回話したいのは、江戸時代にを舞台にした化け猫のお話だにゃ」

―禰子さんらしい題材ですね。

「でしょ?にゃ。

 江戸時代、とある城に使える女中がいたんだにゃ。この女中は殿様に大層かわいがられていたんにゃけど、女中頭の岩波に嫉妬されていじめられ、遂には自殺しちゃったんだにゃ。しかし摩訶不思議、彼女の飼い猫に怨念がとりつき、たちまち猫は化け猫に。その鋭い爪で、岩波を無惨に斬り殺しちゃったんだにゃ。でも結局その化け猫も、殿様の臣下が射た弓で負傷してしまったにゃ。命からがら山奥へ逃れたその化け猫は、後の世に復活するために永い眠りに着いたのにゃ。そりゃーもう、長いながーい眠りだったんだにゃ」

―まるで、自分が経験してきたことのように語られますね。

「まるでも何も、当事者だにゃ」

―え?

「猫らしくマイペースに生きていたいからあなただけに見せる秘密にゃんだけど、ほら、にゃ。人間にはこんな爪と瞳孔はないでしょ? にゃ」

―……こっ、これは一大スクープですよ!! 僕は隠さずに今すぐこのレコーダーを大手メディアに売り出します! 何だったらあなたの身柄を闇の生体実験機関に提供すれば、僕も第一発見者として一躍大金持ち……フフフ……

「……やれやれだにゃ。人間としてひっそり生きていこうとも思ってたけど、あの女の卑しい血統は、こんな後世の子孫になっても受け継がれてると見えるにゃ」

―え?

「最近の若い子は自分の出自を知らないから困るにゃ。ウチが何のためにキミにSNSでDMを送ったと思ってるのかにゃ? ネットでその名前と外見を視て、すぐ察したにゃ」

―そ、それはどういう……

「命からがら眠りについた時、誓ったのにゃ。あの女中頭の子孫が卑しく生きていれば、また殺してやろう、と。正体を秘密にするのを約束してくれたら怪談だけで帰るつもりだったけど、キミがチャンスを不意にしてしまって残念だにゃ」

―ま、まさか……

「今日は怪談を聞いてくれてありがとうにゃ。お礼に怪談っぽく血だらけのオチをつけてあげるにゃ。ね、岩波にゃん?」

―ひっ、た、助け―――


短編【化け猫の怪談~とある(なぜかICレコーダーが血まみれの)録音音声から~】

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