第7話 2021年7月7日昼過ぎ

「なぁ、着物はあれじゃないか・・・?」


 きょどる俺。絵になる織姫。


 カシャッ


「あっ、んにゃろう!」


 何人かの男、いや性別は関係ない。わずか小一時間の間に何人かの人が織姫の隠し撮りしていた。中には話しかけて一緒に写真を撮る人や、芸能関係者及びそれに準ずるモデルなどのスカウトが織姫に話しかけてきた。それくらい織姫は人の目を奪うくらい絵になる女性だ。西洋人が舞妓さんと勘違いして話しかけてきた時は、織姫が硬直していて、それはそれで可愛かったが、俺のカタコト、いいや、ネイティブ過ぎた英語でなんとか織姫を守った。


「んー、いいんじゃない?だって、やだもん。あんな薄着。ぜーったい嫌」


 織姫がおへそを出した女の子たちを平気で指を差すから俺は慌てて止めさせる。

 でも、時は7月。田舎だからとは言え、織姫の時代よりも大分暑いに違いない。


「でも暑いでしょ?織姫」


「いや、いやっ。好きになった殿方にしかわらわの恥ずかしい姿は見せとーない」


 真っ赤になる織姫。


「じゃあ、昨日の白い着物は?」


「・・・」


 黙ってさらに真っ赤になる織姫。今にも湯気が出てきそうというか、もう出てきた。


「俺のこと・・・すっ」


「すっ?」


 顔を赤らめての上目遣いは反則だって。


「すーーーーっ、はーーーーっ」


 コミュニケーションが苦手なヘタレはいい切り替えしができず、深呼吸でごまかす。


「とっ、とりあえず、2時に向けて暑くなるからショッピングモールに行こう」


「はい」


 にこりと返事をした織姫。

 毎回ドキッとする俺自身がダセーなと思いつつ、その甘酸っぱさは、まんざらじゃなかった。



 

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