第2話 2021年7月7日0時
「よしっ、準備は整った。社会人として5分前行動は当然だなっ」
俺はカーテンをシャッと開ける。
電気をつけていないこの部屋よりも若干明るい世界が現れた。
天気はあいにくだが、まぁいい。
「ふっ、満月なら俺の魔力が暴走しかねないからな・・・これでいい」
ガラガラガラッ
俺は窓を開ける。嵐が来るような雨。
嵐を呼ぶ男の誕生日にふさわしいぜ、まったく。
吸血鬼の眷属である俺は夜の方が強い。
暗黒の力も同時に制御しているのだから敵わないぜ。
「くそっ、入り過ぎだろうがっ」
雨が中にも入ってくるのを「入ってくんな」と念じる。
「風向きが・・・変わった・・・?」
村人Aのような素朴な感じを俺は演じる。
「くっくっくっ、どうやら才能が溢れすぎて、フライングしてるんじゃねーか?あっはっはっはっ」
おっと、秒針がそろそろwake up、つまり直立という名の12を目指して、6から上向いてきた。
「セット・・・っ」
5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・
「彼女よ、出でよ!!」
・・・
「出でよ!!」
・・・
「でよ!!」
・・・
「くっ、もしや、彼女召喚は光魔法なのか・・・?天使の彼女と堕天使の俺の恋を邪魔するなんて・・・神様のばかやろーーーっ!!」
ゴロゴロゴロッ!!
カミナリがなった。
思わず、びびって、少しだけちびっちまったぜ。
「ふん・・・いいさ。俺には#ネット__リアル__#な世界がある」
んなわけあるわけねーだろ、ばーか、とネットで書き込みをしていたけれど、心のどこかで信じたかった。
30歳で童貞なら魔法が使えるってのを。それをきっかけに俺だって・・・。
俺は再び、部屋の方を見る。
ピカッ!!!
俺の汚い部屋が照らされる。
「1・・・2・・・3・・・4・・・」
撃たれ弱いが、切り替えは速いのが俺の良いところだ。
魔法使いがダメなら、科学者だ。
カミナリが光ってからの秒数でどこで、音速と高速の速度の差で、距離を測ってやる。そして、時間という概念を完璧に理解して、作ってやんよ・・・タイムマシーンってやつを!!
「15・・・16・・・」
おかしい。かなり強い光で光ったはずなのに、全然音が鳴らない。
俺は耳もいいし、体内時計も正確だ。
なんたって、占領戦や、爆弾のタイマー解除などは相手の足音の距離と時間を計算できなければ、間抜けな的になってしまう。
「まさかっUFO!!」
俺はUFOの発見者として、世界に名を轟かす存在になってしまうのかっ!?
心を躍らせながら、後ろを見ると、窓の枠に羽の生えた大きな昆虫のような影があった。
「うわあああああっ」
聴力、絶対体内時計、空間認知能力、反射神経など様々なスキルを持っている俺だが、どうやら堕天した時に翼と共に運動神経というステータスを失ったらしい俺は後ろに尻餅をついてしまう。
ピカッ・・・・・・・・・ゴロゴロッ
(十二単?)
ピカッと普通のカミナリが鳴ると、羽に見えたのは赤い十二単で、黒い長髪の女の子であることが分かった。
「よいっしょっと」
女の子は電気のリモコンをピッとつけてる。
輪郭しか見えなかった女の子の顔が見えた。
「かわいい・・・っ」
思わず声が出た。俺はファンタジーでも、SFの世界の主人公ではなく、どうやらラブコメの主人公だったらしい。
いわゆるボーイミーツガールってやつだ。
艶やかな長い黒髪、細い眉毛、パッチリした瞳、薄い唇。温室育ちの白い肌。羽織った着物でスタイルはそこまでわからないがスレンダーだと感じた。歳は童顔だけれど、20代前半か?俺の好みドストライクの清純系美少女がそこにいた。
それはまるで―――
「かぐや姫・・・」
「ちゃうわっ、織姫やっ!!」
かわいらしい声がツッコミをいれてくれる。
その夫婦漫才のような阿吽の呼吸には運命を感じられずにはいられない。
「会いたかったよ?ダーリン」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます