【完結】七夕に願いを。ニートな俺が織姫に会う件について
西東友一
第1話 2021年7月6日
コンコンッ
「・・・」
(ちっ、集中力が削がれた・・・コンマ03秒の遅れだ。だがしかし!!それくらいでは俺の動きは鈍らないぜ!!)
カチャカチャカチャ・・・
俺は相手に先に気づかれたはずだが、鮮やかに二人の敵を打ち抜く。
この相棒にも何度世話になったことか、俺はアサルトライフルにキスをするコマンドを入力する。
「光彦っ、返事くらいしなさいっ!!」
「うっせーなっ、あっ・・・ババアのせいで死んじまったじゃねーかっ!!」
俺はヘッドフォンを取って、文句を言う。
「ご飯、置いとくよっ!!」
母親がそう言って、廊下を歩いていく音が聞こえる。
「もうすぐ30歳だってのに働きもしないで・・・死んでもらった方がましだよ・・・まったく・・・お隣さんはお孫さんがいるってのに・・・うちは・・・」
ぼそっと母親が言いながら階段を下りていくのが聞こえる。
ガチャッ
「聞こえてんだよ、バーカッ」
扉を開けて、俺は母親がいたであろう誰もいない階段へ文句を飛ばす。そして、速やかに扉の向こうにあった食事の乗ったお盆を部屋へと回収する。
「げっ、野菜多すぎだろ」
俺はお盆を持って、テーブルへお盆を置こうとするが、漫画が置いてあったので、お盆の角で押すと、漫画が床に落ちる。
「いただきます」
この挨拶は親へではない。野菜を含めた生命に対してだ。
やはり殺戮の覇者:ダスターとして、キル/デス率115パーセントをキープしている俺は命への感謝は忘れない。
「ふっ、まったく罪深いぜ・・・」
クロスにした箸で俺はおかずを掴みながら、白飯を書き込んでいく。
「おっと、そう言えば明日は・・・七夕イベント最終日かつ、俺様の誕生日ではないか。ふっふっふっ。割引を駆使して、新たな装備で戦場に降り立つか」
誰もいなくても決めポーズ。
けっ、決して、キメーポーズではないぞ?
お気づきの方しかいないと思うが、俺はファーストパーソン・シューティングゲーム、通称FPSのトップランカー
星野光彦。おっと、これは仮の名だ、ハンドルネームこと本名ダスターだ。明日で30歳になる。
『もうすぐ30歳だってのに働きもしないで・・・死んでもらった方がましだよ・・・まったく・・・お隣さんはお孫さんがいるってのに・・・うちは・・・』
モグモグモグっ、ゴックンっ
俺の本当の世界に恋愛要素なんてない。
だから、彼女いない歴=年齢だ。
「そういえば、30歳になれば魔法が使えるはずだったな・・・よし、予定変更だ」
「ジーーッ、応答せよ、ダスター」
無線の真似をして、声色を変える。
「こちら、ダスター、オーバー」
「0時ふたまる、魔法使いになったのち、魔法を行使し、彼女を召喚せよ。繰り返す、魔法を行使し、最高の美少女の彼女を召喚せよ。オーバー」
もう一度、声色を変える。俺が思う大佐っぽい凛々しい感じ。うん、さっきよりもいい声だぜ。
「了解だ」
とりあえず、俺は鉛筆と昔学校で使っていたノートを引っ張り出し、メモを書いてお盆に乗せて扉の外に置く。
きっと清掃員のおばちゃんが取りに来て、ボスに届けてくれるはずだ。
おいおい、こどおじとかいうんじゃねぇぞ?そんなことをいう奴は背中に注意しな。
ダスター様のアサルトライフルが貴様のハートをロックしてるぜ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます