第63話【レオン&響視点】

【前書き】

 久しぶりの更新で設定を忘れた……。

 矛盾はコメントで教えてください。


【本文】


 どうもみなさんお久しぶりです。同情するなら人肌の温もりを教えてよ、レオンです。

 響さんの魅力に惹かれて孤児院に潜入してから早いものでそれなりの月日が流れました。

 警戒心が強いと言われる鬼の響さんの態度がほんの少し柔らかくなったのが生きがいです。そうそう、この前響さんが屈んだときにパンチラが発生してたよ。

 男はパンチラだけで生きていけるだなぁ……レオを。

 超絶和風美人のそれだけでご飯は何十杯と行けるんだけど……やっぱり男ならパンツの向こう側を目指すべきじゃないだろうか。いや、わかってる。わかってるんだ。DTの俺にその先は刺激が強すぎることは。だが、俺はもう耐えられない! 最近になって俺はようやく気がついたんだ! ロリヒモ光源氏スパイラル計画は〝お預け期間が長すぎる〟ってことに! クソッ、策士策に溺れるとはこのことか……!

 神セブンの娘たちは、折り紙一つで俺のことを全肯定してくれる。よもや人生のピークがこんなところに潜んでいたとは思いもよらなかった。ハイハイするだけで女性を笑顔にできる赤ん坊になった気分だ。できれば、大人の姿でも響さんにハイハイしたい。理想は喜んで欲しい。ママー、マンマミーヤー!と叫びたい。おぎゃりたい。

 閑話休題。

 名実共に恥将ちしょう__おい、漢字が違う! 痴将__おおい! 乳将__ええい、もうなんでもいい! この天才的な頭脳を持つ俺はある真理の扉にたどり着いた。

 ……孤児院にお風呂を作れば楽園ができあがるんじゃないかって。

 ここは、異世界特有の『風呂は王族や上級貴族の特権』が成立している。魔術に『浄化』があるものの、そもそも魔術を発動できるものも少ない。事実、孤児院の子たちは裏山の川で水浴びをしている。

 遠聴という名の盗聴によれば、どうやらみんなで水のかけあいなどもしているらしい。俺も響さんとかけ合いたい。裏山だけに羨ま。……しょうもな!

 だが、俺のことをくだらないオヤジギャグしか出てこない哀れなおじさんだと思ったら大間違いだ! すでに勝利の方程式は出来上がっている! 学生時代の数学の偏差値は23だったがな。

 俺が【天啓】で目をつけたのはクウである。あの娘はなんと錬金術の才覚がある。それも化け物レベルのそれである。覚醒すれば毎日お風呂に入ることもできるだろう。

 女性の魅力をさらに引き立てる石鹸の開発だってできるだろう。石鹸がないにも拘らず、すでにいい匂いがする響さんの全身からふわりと漂う甘い香り。こっ、これが鬼に金棒__いや、鬼に石鹸! ちなみに俺の金棒はいつ握られてもいいですよ! 石鹸で洗っておきますね! ふぉおおおおおおおおおおお! たぎってきた。たぎってきたぜ! アクセル全開だ! もう俺は止まらねえからよ、お前らも止まるんじゃねえぞ……って、それ撃沈のフラグじゃねえか⁉︎

「えっと……お話ってなんでしょうかレオンさん」

 執務室に呼び出した響さんは俺と二人きりなのが気まずいのか、若干声のトーンが低く、伏せぎみに言う。この反応__誰がどうみても苦手な男性と同じ部屋に閉じ込められた女性のそれまんまじゃねえか! クソッ……凹む。しかし I have a dream。私には夢がある! 響さんの入浴を覗くという夢が! 響さんの全身から石鹸の匂いを漂わせ、俺の鼻腔を幸せにするという夢が! 神セブンが響さんを揉みながら「おおきいー!」と歓喜する声を盗聴するという夢が!

 そんなドスケベドリームはおくびにも出さず、俺は真剣な表情を作り込む。なにせここからは一世一代の大勝負。

 ざわ…ざわ…。

「お忙しいところ申し訳ありません。おかけになってください」

「いっ、いえ。このままで結構です」

 クッ、一秒でも早くこの執務室から退室したいってことですか⁉︎ 言動が柔らかくなったような気がしたのは勘違いだったか! クソッ、俺は一体何度同じ間違いをすれば気が済むんだ。ちょっと砕けた言動をされたぐらいで「あっ、こいつ俺のこと好きだわ」とか痛すぎる! いつになったら彼女ができるんだ! 人生でモテ期は三回あるって言ったじゃないですか神様。まさかオンドゥルルラギッタンディスカー!!

「実は響さんに相談がありまして」

「えっ……そうですか。相談……でしたか」

 俺が切り出すと響さんの態度がさらに暗くなったように見える。えっ、話す前からテンションだだ低なんですけど⁉︎

 そっ、そんなに俺と二人きりになるのは嫌でしたか……。少し前に真剣な表情、CV大塚明夫で「大切な話があるので、後で執務室に寄っていただけますか」とちょっとカッコつけたばっかなのに……恥っず! はっっず!

 響さんからすれば「こいつ、顔面偏差値23のくせになにカッコつけてんだ。冗談は顔だけにしろ」とか思われてたってこと? あかん、マジ凹む。

 ワンチャン、異性としてそれなりに魅力を感じてくれているかも、なんて期待してたんだけど…… アンダドゥーレハ、アカマジャナカッタンデェ…ウェ!。

 しかも心なしか、目が潤んでない? と思ったらキッと睨まれてんだけど⁉︎  どええええええええ⁉︎ どういうこと? 今にも泣き出したいほどにこの部屋から出て行きたいってこと? 好感度0どころかマイナスにふりきれてんじゃねえか!!!

 もういいよ! 発想の転換だ。好感度が上がってないなら気兼ねなく入浴を覗けるもんね! なにせ失うものはなにもないんだから! これぞ最強のポジティブ思考だ!

 俺はスーと息を吸い、切り出す覚悟を固めていく。

「クウに錬金術を指南しようと考えています。響さんの率直な意見を聞かしてください」

「反対です」

 ぐぎゃあああああああああああああああ!

 即答された! 即否定された!

 頑張れレオン頑張れ!! 俺は今までよくやってきた!! 俺はできるやつだ!! そして今日も!! これからも!! 心が折れていても!! 俺がくじけて響さんとの混浴を諦めることは絶対に無い!!


【響視点】

「大切な話があるので、後で執務室に寄っていただけますか」

 レオンさんにそう声をかけられたとき、私はみっともなく動揺しました。

 彼がこの孤児院にやってきてからしばらく経ち、私が警戒していたことは起こる気配はありません。レオンさんは孤児たちと遊ぶときは少年のような__失礼を承知で言えばとても楽しそうでひまわりのような笑顔です。かっ、可愛い……。こっそり彼の笑顔を魔道具で盗撮しているのがバレたら幻滅されるでしょうか……鬼の起源が隠から来ているように、こればかりは絶対に隠し通さなければいけませんね。

 レオンさんが真剣に孤児と孤児院の今後のことを考えてくださっているのは普段の言動を観察していればヒシヒシと伝わってきます。人はここまで慈悲深くなれるのかと感心するほどです。気がつけば私は心の侵入を赦さぬよう立てていた強固な壁を壊されていました。

 しかもその……レオンさんはじょっ、上手でして。私のような鬼__それも殺人鬼にも拘らず、絹を扱うように接してくださって。まるで私がいい女のように思えてくるのです。うう……これまで散々、外道を欺いてきた鬼と同一人物だとは思えません。

 正直に告白すれば、少々、レオンさんに惹かれ始めていることは否めません。

 そんな彼からのお呼び出し。

 心なしか体温が二、三度上がったような気がします。れっ、冷静になりなさい響! 殺人鬼とはいえ、女を部屋に呼び出したのです。それも明らかに真剣なそれでした。もちろん業務の線もあるでしょう。ですが、どうしても__ワンチャン、異性として魅力を感じてくれているのかも、と期待がよぎります。

 私は冷静さを装いますが、レオンさんは覚悟を固めたような__漢のような目チカラをしていました。明らかにいつも見せる表情とは違うそれです。

 

「実は響さんに相談がありまして」

 オンドゥルルラギッタンディスカー!!

 自分でもよくわからないのですが、私は胸中でそう叫んでしまっていました。

「えっ……そうですか。相談……でしたか」

 いけないことだとは理解しつつも、期待していた方面の話じゃなかったことにひどくガッカリしている自分がいることを自覚しました。気持ちと思考を切り替え、レオンさんの相談に乗らなくては__頭ではわかっているのです。ええ、ええ、わかってはいるんです! でもどうしても気持ちの方がついてこなくて__私は一体いつからこんなはしたない女になったのでしょうか。うう、恥ずかしい。恥ずかし過ぎます。

 レオンさんからすれば「こいつ、女子力23の殺人鬼なのになにもじもじしてんの? こっちは孤児院の運営を真剣に考えてんだよ。冗談は顔だけにしろ」とか思われてしまったでしょうか。

 …………ぐすっ。アンダドゥーレハ、アカマジャナカッタンデェ…ウェ!

 いえ、発想の転換です。同僚の鬼から聞いた話によれば仕事の相談をしているうちに親密となり、ゴールインした、という話をよく聞きます。私とレオンさんが釣り合うとは本気で思っていませんが、信頼度は上げておいてもいいでしょう。べっ、別に下心なんてありませんよ。

 と、切り替えるものの、いつからこんなに弱い鬼になったのか、私は若干、目が潤み始めていました。ここで涙を流すわけにはいきません。レオンさんからすれば意味不明でしょう。恋愛方面のお誘いがなかったから、悔し涙を流す女。ダメよ、地雷すぎる……! 重い、重いですよ響!

 私は涙だけは流すまいとキッと表情を固く結んで、レオンさんの次の言葉を待ちます。

「クウに錬金術を指南しようと考えています。響さんの率直な意見を聞かしてください」

「反対です」

 いやああああああああああああああああ!

 待ってください! 待ってください! いまのはナシで! お願いですから時間を巻き戻してください! 

 なんで即否定してるんですか響! これじゃ可愛げなんて一切ない女じゃないですか!

 もう嫌だぁ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る