第62話【レオン視点】

 どうもみなさんこんにちはレオンです。

 冒頭から謝罪です。ごめんなさい。おっきしています。

 下半身がフルバースト状態の俺は前屈みになっている。

 到着したことを視認したクウ、シオン、レナは、

「レオンちゃん!」

「お父さん♪」

「お兄さん」

 心なしか声が弾んでいる。

 やめろ。やめてくれ! そんな待ってましたみたいな視線で駆け寄らないで欲しい。こっちは凶悪化している息子の制御でいっぱいいっぱいなんだ。

 中でも成人したクウの威力はやはり凄かった。つるぺたすとーんだった面影など微塵もない。ロリ巨乳。ロリ巨乳である。

 しかも頭部には狐耳、臀部にはもふもふの尻尾ときた。触りたい。全力で飛びつきたい。くんかくんかしたい。

 俺は走って駆けつけてくる三人に手を突き出し停止するよう指示する。

 その行動に三人は「えっ?」という反応。まるでご主人様に見捨てられたような子犬のような目である。

 ああ、ああ、その気持ちはよくわかる。きっと俺のいない間にミニスカ談義に花が咲いていたんだろう。

 シオンは素材の調達方法、生産体制や販路、クウは錬成による新商品開発、レナちゃんはデザイン。これ以上ないミニスカ普及チームだ。俺だって本当はスキップしたいよ!

 うっひょぉぉぉぉぉぉぉって叫びたいさ! けど、ここにきて俺の息子は全然言うことを聞いてくれない! まさかのバーサーカーモードである! 熱い! 下半身が燃えるように熱い! クソッ! セレスさんのデカ尻を痴漢したところを妄想した程度でフルスロットルだと⁉︎ 童貞丸出しもいいところである。

「……うっ……!」

 膝から崩れ落ちる俺。

 馬鹿な!!!!!! まだ大きくなるというのか愚息よ!

 これだけはツッコんでおかないと死んでも死にきれないから言っておく。

 俺の息子は決してポークビッツなどではない!!!! 断じて否!!!!

 例えるならジャンボフランクだ! 

 いや、大きさで見栄を張っている場合じゃねえ!

「レオンちゃん⁉︎」「お父さん⁉︎」「お兄さん⁉︎」

 突然崩れ落ちた俺に対して三人は血相を変えて傍まで駆け寄ってくる。アホか! 逆効果じゃねえか! 

 俺は変態だ。むっつりだ。ドスケベである。しかし自供だけは決してこなかった。

 彼女たち娘の前では紳士であると決めたからだ。そんな俺が――父親がおっき状態でミニスカの製造に入ってみろ。これまでの敬意など塵と化す!

 誤魔化さなければ! なんとしてでも誤魔化さなければ! 

 いや、もういっそ紳士の仮面を脱ぎ捨てるか? だが、おっきした理由をどうやって説明する? どう正当化すればいい?

 秘書のデカ尻を痴漢するところを妄想してフルバースト状態になっちゃった? 馬鹿が! やっぱりド変態じゃねえか⁉︎ しかもミニスカ製作に熱が入ってみろ! もう変態を通り越して危ないヤツじゃねえか!

 だめだ。とてもじゃないがジャンボフランク状態を打ち明けるわけにはいかなくなった。そもそもミニスカはピンク政策の第一段階。街中をおしゃれでいい匂いのするお姉さんで溢れさせる第一歩。その後はグラビア撮影――げふんげふん――モデル撮影という名目で響さんやセレスさんに穿いてもらうのだ。もちろんカメラマンは俺だ。

「ナイスですね〜」「素晴らしいですね〜」「屈んでみましょうか」「まずは上着から」と巧みな話術を相手を乗らせつつ、一枚ずつ服を脱がせるという夢が俺にはある。

 そのためにはエッチな写真を撮影するための大義名分が必要なのだ。ここでいやらしいスケベ心だとバレるわけにはいかない! 響さんにM字開脚させるためにはこんなところで紳士の仮面を脱ぎ捨てるわけにはいかない。

 ぼとぼとと額から滑り落ちていく大粒の汗。鼻息が荒い。酸素が足りていない。口から補給しつつ、ドクドクと早鐘を打つ胸に手を当てる。

 落ち着け……! 落ち着くんだ! まだいくらでも誤魔化せる。三人も俺がおっきした状態で転移してきたとは夢にも思っていないだろう。当然だ。どこの世界にフルスロットルで堂々と転移してくる変態がいる? あたいだよ! ちくしょうが!

 思考がぐるぐると忙しない。

 膝から崩れ落ち、呼吸を乱し、立ち上がれない状況。その理由が思いつかないまま、禁断の質問が飛んでくる。

「どうしたのレオンちゃん⁉︎ どこか痛いの⁉︎」

 オチ○チンが痛い! クソッ、どうなってやがる! なぜ俺の言うことを聞かない相棒⁉︎

 あっ、ちょっ、シオン肩に触れないで! ダメだって! 今キミの柔らかい指の感触だけで治りが悪くなるんだよ! 

「ご安心くださいシオン様。レオン様は――」

 おいおいおいおいおいおい⁉︎ なんの躊躇もなく、なにバラそうとしてんねんチミ! 馬鹿か? 馬鹿なのか?

 まさか「レオン様はパオーンしているだけです」とでも言おうとしたんじゃねえだろうな⁉︎ 裏切り者! 裏切り秘書め!

 元はと言えば全部セレスさんが悪いんじゃん! 俺にデカ尻を撫でさせる妄想なんてさせやがって! 許さない! お仕置きだ! 帰ったらキッツいお仕置きをしてやる! なんでもかんでも喋ろうとしているその口にジャンボフランクで塞いでやる! ポークビッツじゃないことを証明してやる!!!!!!

「――黙れセレス!!!!!」

 俺の悲痛の叫びに落雷したかのようにビクビクビク! っと全身を震わせるセレスさん。

 ガハハ! 効果抜群だ! 冷徹毒舌褐色美女の正体はドM! 俺と主従関係のままでいるのもその方が彼女にとって都合が良いからだ! 舐められては困るぞ。こっちは変態面に関しては超一流なんだ。特殊な性癖を持つ女の子の扱いなど朝飯前だ! なのになんで童貞のままなんだ! ママー!

 俺の息子、レオ君が「ガオー!」状態であることを必死に隠すため、セレスさんの手を握り、睨みつける。

 言っておくけど怒りも本物だからな? おっきしている状態で転移なんてしちゃってさ! 待ってって、言ったじゃん!

「――よろしいのですか?」

 なにがだよ! なにがよろしいのですか、だよ⁉︎ まさか勃起していることをみんなに打ち明けなくてよろしいのですか、ってこと?

 よろしいに決まっとるわ!

 俺は「小ちゃくなれ、小ちゃくなれ、小ちゃくなれ!」と命令を下しながら下半身に全集中。

 息子「貸ひとつだぜ?」

 やかましいわ! おめえが詫びろ!

「……ああ、もう大丈夫だ。すまないなシオン、クウ。ちょっとした立ちくらみがしてな。心配はいらない」

「心配なの! エリスに診てもらった方がいいの、なの!」

 純粋なクウは透き通った瞳で俺のことを見つめてくる。やめてくれクウ。俺はただおっきしていただけなんだ。そんな顔を向けないでくれ。変態ドスケベ監督といえど、情けなくなってくる。

 俺は心配そうに見つめてくるクウの頭に優しく手を置く。

 うっひょ! もふもふぅ〜! すっご! すっげえ! これぞ異世界転生者の夢の一つ、もふもふの醍醐味だよな! うわぁ〜、すげーめっちゃ手触り抜群じゃん! 最高ォォォォォ! 

 俺はせっかく収まった息子を再びスタンアップさせないため、クウとの過去を思い出すことにした。

 忘れないのはやっぱり――お風呂のことだ。あれが今思い出しても本当に素晴らしい。

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