第3章 気になる女の子

第14話 銀色の腕輪


 次の日の朝、学校に行く準備をした俺は、昨日、アランにもらった銀色の腕輪を見つめた。


 右手を上にして「ララ」と念じれば、その手の平に、昨日と同じようにララが出てきた。


 昨日の夜、アランに渡されたを、ララの中に埋め込んだ。


 お腹の糸を解いて、ふわふわの綿の中にハーツを入れて、また縫いつけて。


 だけど、ハーツを中に入れたからと言って、すぐに動くわけじゃないらしい。一晩たっても、ララは、動かないままだった。


(本当に、動くのかな?)


 ハーツが体になじむまでに、少し時間がかかるらしい。だけど、なんの反応もないと、ちょっと心配になってくる。


(そう言えば、カールさんのハーツは赤だったけど、なんで、ララは青なんだろ?……ていうか、ララも、あの二人みたいに、人間の姿になったりするのかな?)


 昨日、戦っていたカールさんとシャルロッテさん、すごくかっこよかった。


 守ってくれるってアランは言ってたけど、ララがあんな風にかっこよく戦う姿を想像したら、ちょっとテンションが上がる。


 まぁ、それ以上に嬉しいのは、ララと話ができることだけど!


「颯斗~、ご飯よー」


 一階からお母さんの声がきこえて、俺はまたララを腕輪の中に戻した。今日は日直だから、早くご飯食べて、学校に……


「──て、よく考えたら、腕輪もつけて行っちゃダメじゃん!!」


 はっと気づいて、青ざめた。


 昨日は、魔法に感動していて気づかなかったけど、腕輪とか、時計をつけていくのは、完全に校則違反だ!


「あれ、はずれない!」


 しかも、なぜか腕輪は全くぬけなかった。


「もしかして、コレはずれないんじゃ! どうしよう、長袖着てればバレないかな? あ、でも、今日体育あるし!」


 朝から、大ピンチ! こんな目立つ腕輪なんてつけていてば、どうなるか!


「……あれ?」


 だけど、その瞬間、ガラス窓に映った自分の姿を見て、俺は目を見開いた。


 なぜなら、そこには、あるはずのものが、なぜかから。


 ──ドタドタドタドタ!!


「お父さん、お母さん、夕菜!!」


 瞬間、俺は、勢いよく階段を駆けおりると、朝食の準備をしていた、お父さんの威世 和彦かずひこと、お母さんの威世 かえでと、妹の夕菜ゆうなに向かって、叫んだ!


「これ、なんに見える!?」


 そう言って、銀色の腕輪を指さす。すると


「何って、腕?」とお父さん。


「手首でしょ?」とお母さん。


「右手じゃないの?」と夕菜がいって


「だよな! ただのにしか見えないよな!?」


 ポカンとして三人がそう言えば、俺は再び銀色の腕輪をみつめた。


(これ、見えてないんだ……!)


 誰にも見えない銀色の腕輪。


 すごい!

 これなら、学校にもつけていける!




 ◇


 ◆


 ◇



 そんなこんなで、その後、学校でも、誰にも見えなかったらしく、先生にも友達にも、全く注意されなかった。


 魔法道具ってすごいんだな。

 いや、アランがすごいのか?


(えーと、魔界、魔族……?)


 そして、昼休みに入って、俺は図書室に来ていた。アランと出会って、ふと魔界がどんな所なのか、気になったから。


 だけど、図書室で本を探すのって、結構大変で、魔界の本がどこにあるのか、さっぱりだった。


「えーと……あ!」


 だけど、それからしばらく探し回って、それっぽい本をみつけた俺は、グッと手を伸ばして、壁ぎわにある少し高い本棚から本をとる。だけど


「わっ!? 痛ッて!」


 一冊だけ取るはずが、その本と一緒にバサバサと何冊も落ちてきて、しかも、一冊は俺の頭に当たった。


「っ~~……ッ」

「大丈夫?」


 痛くてうずくまっていると、そこに誰かが声をかけてきた。顔をあげれば、そこには、花村はなむらさんがいた。

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