第9話 下校途中にご用心!

◇◆◇


(なんか、嫌だな、あーいう空気)


 学校が終わって、その日の放課後、通学路を帰りながら、俺は朝の事を考えていた。


(花村さんって、なんであんなに大人しいんだろう)


 昔からあーなのか、四年生で転校した時には、もう、あんな感じだった。


 同じクラスだったけど、花村さんとまともに話したのは、たったの一度きり。


 だけど、それから少し気になるようになって、前に先生に聞いたことがあった。



 ◇



『うーん、でも、イジメがあるわけではないし』


 四年生の担任だった山田先生は、花村さんのことをあまり深くは考えていないようだった。


 花村さんじたい、あまり人と関わらないようにしていたみたいだし、なにより、幽霊といじられることはあっても、本当にいじめられているわけでもなかったから。


『威世くん、確かに花村さんに、お友達がいないのは心配だけど、あーいうのは花村さん本人が変わらないことには、どうすることもできないものよ』


『本人が?』


『そうよ。お友達は、自分が作る気にならないと、できないものでしょ』


 先生はそう言っていた。

 俺の周りには、友達がたくさんいる。


 俺は、それが嬉しいし、楽しい。


 だから、花村さんだって、友達が出来たら嬉しんじゃないかと思っていた。


 でも──



 ◇



(花村さんは、友達欲しくないのかな?)


 もしかしたら、余計なお世話なんじゃないか。そう思うと、何もできなくて、けっきょく、そのままになってる。


 だけど、さすがに幽霊あつかいをされるのは


(……あれ?)


 だけど、その瞬間、ふと違和感に気付いて、俺は足を止めた。


 考え事をしていたせいなのか、一度とおったはずの道がまた現れて、俺は首をかしげる。


(あれ? ココ、さっき通ったよな?)


 いつもの通学路。けっこう歩いたと思ったのに、おもったより進んでなくて、不思議に思いながらも、またその道を進む。


 だけど──


(ッ……やっぱり、おかしい!)


 ランドセルをきつく握りしめて、スタスタと足早で歩く。


 だけど、いつもなら誰かしらすれ違うのに、今日は誰ともすれ違わなかった。


 下校中の生徒もいないし、郵便配達のお兄さんもいないし、買い物がえりのおばあさんもいない。


(なんで……?)


 なんで、誰もいないんだろう。


 なんで、俺は、同じ道をぐるぐるしているんだろう……!


「アラン様!!」


 すると、電信柱の上から声がした。

 それは、昨日、俺を散々追いかけまわした


「あぁ、ヘビのオッサン!?」


「はぁ!? 私はまだ86だ! オッサンと呼ばれる年ではないわぁぁ!」


 現れたのは、昨日のヘビ男。


 しかも、オッサンといわれて、すごく怒ってる。ていうか、86歳って若いの!? 俺の感覚だと、オッサン通り越して、おじいちゃんだけど!?


「おっと、これは失礼いたしました。我らが魔王様の大事なご子息に向かって、なんて舐めた口を。ですが、さすがはアラン様! 人間に子供になりきるその演技力の高さ、恐れ入ります」


 あ、コイツまだ、俺の事アランだと思ってる。それはそうと、やっぱり昨日のとは、夢じゃなかったんだ!


「さぁ、アラン様! 我らと一緒に帰りましょう!」


「!?」


 すると、ヘビ男が大きく両手を広げた。


 まるで、ショーでも始めるみたいに、腕や翼を広げたベビ男を中心に、いくつもの影が現れた。


 まるで忍者みたいに、シュッと音もなく出てきた数人の影。


「もう、アラン様ったら、家出なんてしちゃダメだケロ」


 カエルぽい服を着た女の人。


「どこへ逃げても、無駄でござるよ」


 サルみたいなしっぽを生やした男の人。


「あなた様は、いずれ魔王様の後を継ぐ大事な後継者。いい加減、自覚を持って下さい」


 そして、ライオンの顔をした大男!


(ッ……囲まれてた!?)


 一、二、三……六人の魔族に!?

 しかも


「さぁ、である我々が、総出でお出迎えに参りましたぞ!」


「!?」

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