第6話 カオル①

 カオルは、興味のあることにはいつまでも夢中になるタイプだったが、人と話すことに関しては苦手だった。だから、いつも家にいるような種類の人間だった。親は共働きだったため、夜遅く帰って来ることも珍しくなかった。


 しかし、ある日、カオルが法律違反で捕まった瞬間、親は悲しんだ。わが子が逮捕されたことではなく、自分たちが作った子どものせいで仕事を失うであろうことに。その時、カオルははじめて自分が親から愛されていなかったことを知った。


 その後、まもなくカオルは、横名刑務所の箱に閉じ込められることになる。それは仕方ないとして、若いからなのか、他の囚人が珍しそうな目を向けてくることは少なくなかった。


 カオルは、サトルからの気持ち悪いメッセージを頭の中で反芻はんすうしながら、考え込んでいた。


【協力して生き残ろうよ、カオルちゃん】


 どうするか。カオルは、インターネットで幅広いジャンルの漫画を見るのが好きだった。その中に人が死ぬようなデスゲームものの漫画がある。そこでは、バカなやつが真っ先に死ぬ。だから、慎重にいこう。したがって、カオルは、サトルに次のようなメッセージを書いた。


【今は、あなたと協力関係を結ぶことはできません】


 さて、今、わかっている六人の情報をもう一度整理しておこう。彼らの情報はデータみたいなものだから、とても扱いやすい。そして、五人目か。カオルの視線は液晶モニターに映し出されたキョウイチに向けられていた。

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