一日目

第2話 ワタル①

 いつものように目を覚ます。すると、いつも自分たちが過ごす小さな部屋とは違う別の部屋にいることに、気づいた。共通点なんて、殺風景なことくらいだ。


 スリルを追求して犯罪に手を染めた結果、捕まったワタルは、この狭い空間をつまらないと感じていた。なぜなら、彼にとっての生き甲斐は犯罪を犯すことではなく、警察官との追いかけっこにあったからだ。鬼ごっことは違う互いの真剣勝負、それに勝った、つまり逃げ切ったときに彼は満足感と充実感を感じていた。


 もう、スリルを追求することなんてできない。そう思い、ワタルは、深いため息を一度つく。そして、立ち上がろうとした、その瞬間、声が聞こえた。


「ワタル様、オハヨウゴザイマス……」


 しゃべっていたのは、ドラキュラのぬいぐるみだった。もっと正確に表現するならば、そこに埋め込まれた人工音声装置が声を発していた。


 そして、彼が体ごとぬいぐるみの方向に向くと、機械的な音声でそいつはこれから始めることについて話し始めた。

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