罪を暴け

刻堂元記

プロローグ

第1話 舞台

 「死神」とも呼ばれた新型ウィルスが日本に上陸して以来、日本の経済はすっかり落ち込んだ。今では、都心でさえ、失業者があふれる時代だ。


 そんな世の中だから、自分の生活のためなら、何をしてもいいという考えの人々が、一定数現れた。彼らを全員捕まえても刑務所に閉じ込められる人間は限られている。故に、街中で犯罪行為を見かけても黙認する警察官が、わずかながらいた。


 そんな日本の状態(つまり治安の悪さと犯罪者の増加についてであるが)に危機感を覚えた政府は、閣僚会議を重ねた結果、犯罪防止強行法を成立させた。これは、犯罪を起こしそうな人を事前に捕まえることができる法律である。


 また、半年後に、死刑囚削減推進法が可決された。これは、簡単にいえば、死刑囚をどんな手段でもいいから政府が刑務所別に設定した数まで減らせということだ。この法律に従わなかった場合の処置として、違反した刑務所で働く全ての職員の給料を最大五年間、減額または全額没収とするような罰則措置が設けられていた。


 仕方なく、従うことにしたとある刑務所の職員の一人が一つの提案を行う。


「そうだ、死刑囚同士でデスゲームをやらせよう!」


 こうして、死刑囚をランダムに集めて実施されるデスゲームなるものが今回の舞台である横名よこな刑務所で実現することとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る