第19話、ゼータ

 ”記録”の中身はここを使った歴代の”田吾作”による機能の追加についてだった。

冒頭にある渋谷田吾作氏は、ここを買い取り、屋敷をハウスゴーレムとして改造する。

渋谷田吾作氏は優れた魔道具師であり、何度も魔王を倒して現代と往復し屋敷を完成させたようだ。


 次の使用者である品川田吾作氏は、五体のメイドゴーレムを作り、ハウスゴーレムとリンクさせる。

品川氏もまた、とんでもない魔道具師だった。

メイドゴーレムと言いながら、CPUを搭載し、魔力を電気に変換することを可能としていた。


 三人目の記録者、目黒田吾作氏は魔力と電気の変換技術を応用して、ハウスゴーレムにもCPUを組み込んだ。

というか、パソコン一台を丸々リンクさせたのだ。

そして、家の中を電化していく。

この時点で、電子レンジや照明器具・温水器も配備されている。


 四人目の記録者、新宿田吾作氏は太陽光発電を導入し、魔力・電気の変換回路と併用した。

また、照明のLED化やIH導入も新宿氏だ、


 五人目の記録者、有楽町田吾作氏は屋敷のWi-Fi化を。

六人目の御徒町田吾作氏は外部監視機能を組み込んだ。最新のPC導入も御徒町氏による。

そして七人目の田町田吾作氏は、ホムンクルスの研究からバンパイアメイドを発明した。

バンパイアメイドは屋敷と完全にリンクしながらWi-Fiのエリア外でも独立して活動させることに成功している。


「とんでもねえな、こりゃあ」俺は一人ごちた。


 あらためて棺の中を確認すると、テイ〇ースイフトに似たきつめの美女が横たわっている。

どうやら田町氏は白人・ブロンドがお好きなようだ。

俺は躊躇なく唇を噛みバンパイアメイド・ゼータにキスをした。

少し間をおいてゼータが目覚め上半身を起こすと、着ていたメイド服が僅かな衣擦れの音をたてる。


「ご主人様の交代を確認いたしました。

おかえりなさいませ、ご主人様」


どういうんだろう、アニメ声というのかメイド喫茶風というのか、ちょっと舌ったらずな声だった。


「下落合田吾作です。よろしくね」


「ゼータでございます。

お風呂にします? お食事にします? それともワ・タ・シ?」


「風呂に入りたいな」


「かしこまりました」


ここで”ワタシ”を選択すると、いきなり夜モードに突入するのだ。

上に女性陣を待たせている状況で、さすがにそれはまずい……


俺はゼータと共に階上に戻った。


「おじさん、その人は?」


「ゼータ、下で眠ってた。今日から仲間に加わる」

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