第18話、おっさんは家を決めた

『廃屋幻視モード解除いたします』


家の中は一瞬で現代風の空間になった。


「な、なにこれ!」 「信じられませんわ!」


俺も信じられない。

照明はLEDだろうか、柔らかな光を放っている……というか、電気かよ!


『メイドゴーレム起動』


どこかでウイーンという音がして、5人のメイドが現れた。


「「「お帰りなさいませご主人様」」」


「ああ、下落合田吾作です」


「では、所定の作業に入らせていただきます」


「あーっ、なんと呼んだらいい」


「エプロンの刺繍でお呼びください。

私はアルファ」


「ベータです」


「ガンマです」


「デルタです」


「イプシロンです」


メイドゴーレムと言いながら、体の表面はシリコンだろうか、人間と同じように見える。

黒いおそろいのメイド服を着ており、違いは髪の色だけだった。

アルファは赤、ベータは黄色、ガンマは水色、デルタは緑、イプシロンはピンクだった。


「所定の作業というのは?」


「お食事の準備やベッドメイキング、お風呂の準備などです」


「わかりました。よろしくお願いします」


「「「はい、喜んで!」」」


「あっ、地下へはどこからおりたらいいのかな?」


「こちらへどうぞ。

あっ、申し訳ございません、地下に入れるのはご主人様だけでございます」


「みんなは、ここでゆっくりしててよ。

すぐに戻ってくるからさ」


家の中ほどにあった階段を降りていくと照明がついた。

人感センサーかよ。


「アルファさん、この電気はどうやってるの?」


「屋上に太陽光発電が設置されています」


「そんなのどうやって……」


「太陽光発電はウエノタゴサク様が設置されました」


「なんでみんな田吾作なの?」


「さあ、それは存じません」


地下室は一室だけだった。


「ここには歴代のタゴサク様が残された記録と、メイドマスターが眠っています」


「メイドマスター?」


「私たちの総括です。

この姿はマスターであるルナ様のコピーになります。

必要がございましたら、起こしてあげてください」


「同じゴーレムなの?」


「いえ、マスターはバンパイアでございます」


「それ、ちょっと怖いんだけど」


「ルナ様はとても優しいお方ですので、そのご心配は無用かと存じます」


地下室の中央には棺があり、メイドたちと同じ姿をした女性が横たわっていた。


「では、私はこれで失礼いたします」


「ああ、ありがとう」


部屋にある机には、一冊の冊子がおかれておりタイトルは記録となっている。

俺はその記録を手に取り、読み始めた。

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