第20話、おっさんはスッキリした

「これが風呂だ。気持ちいいだろ」


「ええ、確かに全身の疲れが抜けていく感じがしますわ」


「ホント、シルビアの肌なんてピンク色に染まってきれい」


「オネエだって同じじゃない」


「エリスのうなじがいろっぽいわね」


「で、なんで俺だけモヤがかかって見えんだ」


「認識疎外の魔法ですよ。

おじさんには刺激が強いでしょうから、配慮させていただきました」


「エリス、そういう配慮はどこかで期待してた人に悪いと思うんだが」


「あら、おじさん期待してたんですか」


「いや、ほら、お約束ってものがだな」


「しょうがないですね」


エリスは俺の手を取って胸を……


「オネエじゃねえか!」


「あら、オネエじゃ不服みたいよ」


「アタシ、ショック……」



 夕食はメイドゴーレムが用意してくれていた。


「おいしい!」


「素材は、全部自給自足してるんだそうな。

歴代の田吾作氏は長い時間をここで過ごしたみたいだ」


「ここが金貨500枚で買えたなんて信じられませんわね」


「みんなには反対されたけどな」


「そーいうこと言わないの」


「シルビア、あの子もここでなら大丈夫じゃないのか」


「そうですね。あの子の意見も聞いて考えてみます」


 ここにはワインもあった。

肌の白いシルビアとエリスはほんのりピンク色に染まっている。


「歴代の田吾作氏は、みんな何かしら貢献してんだよな。

そう考えてみると、俺には何にもできないし……」


「みなさん最初は同じですよ。

地下に魔道具に関する資料があって、それで勉強されたようですよ」


「ゼータは、魔道具に関する知識はあるのかい」


「いえ、私は魔法専門ですから、必要ございません」


「そうか、魔法が使えないから魔道具に頼るんだな」


「あらあら、みなさん寝てしまわれたようですね。

アルファ、みなさんを寝室にお運びしてください」


「もしかして、魔法か薬を使った?」


「どうでもいいじゃありませんか……」


 俺はゼータとの夜を楽しんだ。

この屋敷は、二階に私室が八部屋あり、一人ずつ個室になる。

一階のリビングは吹き抜けになっており、二人で楽しむには十分な広さがある。



「あー、久しぶりに熟睡できたよ。おじさん、おはよう」


「おはようエリス」


「おじさん、なんかスッキリしてない?」


「そ、そんなことないぞ。

多分、風呂に入ったおかげだろうな」


「そっか、確かに気持ちよかったものね」


「風呂は24時間いつでも入れるからな」


「そうなんだ。

で、これからどうするの?」


「数日はこの家のことを確認するさ。

魔道具の勉強もしておきたいしな。

お前たちは敷地の探検でもしてこいよ。

誰かメイドを連れて行けば大丈夫だろう」


「ん、そうする」

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