(93) 愛と欲望と執着、今ヶ瀬の場合
海外のレヴューで、
「二人の関係は愛?欲望?単なる執着?」
といったものがあると教えていただきました。
これについて私なりに考えてみました、今回は今ヶ瀬の場合を述べます。
最初に本作に関する記事を書いたとき「いつまでも恋が愛にならない今ヶ瀬」と表現しました。
「恋と愛は違う」と言われます、ただ相手への思いを募らせるのが恋。その思いを成熟させ穏やかな形に至るのが愛。そんなふうに私は解釈しています。
これでいくと、やはり今ヶ瀬は恋に一途ではあるけど愛に至らない気がするのです、至りたくないというか。結果はどうあれ、燃える思いを恭一にぶつける、それが目的のような。
恭一への熱い思いはある、だけど思いを成熟させようなんて念頭にない、ただ自分の情熱が大切で。
「『恋に狂う』とは重複表現だ、恋すること自体が狂気だから」
そんな言葉をどこかで聞きましたが、今ヶ瀬の場合は、これに当てはまるかも。
一目で恭一に惹かれた大学時代。今ヶ瀬は、どうにもならないと知りつつ、卒業後も恭一を忘れられなかった。
意外な縁で再会し、圧倒的に有利な立場で恭一を陥落させる。
欲望は満たされ、蜜月時代もあったが、喪服の件でぶちこわしになってしまう。
恭一に似合う女のことまで言及し、完全に別れたはずなのに、心はすぐ変わる。
執着、ストーカー行為。
恭一が今ヶ瀬を追求し、やがて優しい言葉をかけたばかりに、「そばにおいてください」と本音が漏れる。拒絶した恭一だけど、本心では今ヶ瀬を求めていた。
「体の関係なんかいらない」は、二度と恭一と口もきけなくなるよりは、との思いだったでしょう。
本当に半年に一度でも、お茶を飲んで世間話をするだけでも、物陰から恭一の姿を見るだけよりはましだった。
でも、結局元通り、どころか「一緒に暮らそう」と言われてしまい、それは今ヶ瀬の希望と違うので。今ヶ瀬は気ままな付き合いをしていきたかっただけで。
そこにあるのは欲望と執着。愛とは違う、恋すらどこかへ吹き飛んでしまった、いや、恋が欲望と執着に形を変えたのかも。
きっと今ヶ瀬は戻ってくる、そしてまた、たぶん恭一には分からない気気持ちの変化で、姿を消しては、また現れて、を繰り返すののでしょう。
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