(92) 味わいつくしたい

 映画は二度見るべきという意見があります。一度では見えない部分が必ず存在するという意味かもしれません。

 気に入った映画を、もう一度見ようと思うことはありますが、大抵は再見するのが辛いとか億劫だとかいった場面があり、ま、いっか、となってしまいます。逆に、二度目だと、やはり解釈しきれなかった部分が手に取るようにわかったりして、二度見てよかったと思います。

 本作は、一度見て数日で、やはりもう一度見なければ、という気になり、二度目では深堀したくなり、繰り返し見たい場面もあり、と、都合八回見て上映終了、配信開始を待ち望んでいました。


 結果、今もこうして、あれこれ書いているわけですが、中には一度見て激怒する方もいるわけです。原作至上主義者の中には、映画のラストが許せない向きもあるようです。

 確かに原作は一見、ハッピーエンドらしき結末です。が、今ヶ瀬は結局、またぷいと出ていくのではないか、あの性格ですから。

 何度も書いたように、今ヶ瀬は戻ってくると私は信じていますが、何かあったら、またいなくなるだろうと踏んでいます。恭一は、またかと思いつつ、帰りを待つ。二人の関係は、その繰り返しではないでしょうか。


 最近、時短映画というものが話題になってますが、あらすじや見どころを知りたい向きには重宝でしょう。「窮鼠~」には全く向きませんが。

 ちりばめられた何気ない、それでいて意味深なセリフ、絶妙な間、微妙な表情、視線。数え上げればきりがない、とても一度では味わいつくせない繊細な要素の宝庫なのです。

 もちろん、万人向きではありません。見なくても良かった人、見るべきでなかった人も存在するでしょう。何がいけなかったのか、激怒し罵倒する人も散見されます。評価が極端に別れるのも本作の特徴かもしれません。


 私にとっては、ある意味で人生を変えてしまう一本です、今後も本作と出会い、評価する人が世界中に現れることを信じて疑いませんし、これからも、「窮鼠~」を味わいつくしたいと思っています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る