(90)  今ヶ瀬という役

 今ヶ瀬を演じた成田凌は、高く演技を評価されました。色んな賞を受賞しましたし、この役で彼のファンになった人も多いような。一方、大倉忠義は繊細な演技で派手な見せ場がないせいか、あまり評価されておらず残念です。


「大倉さんがどっしり構えて、どこからでも来なさい、というスタンスだったから出来た」

 と成田凌は語っています。あの圧倒的な演技は、大倉忠義が引き出したともいえます、いつぞや二人に「化学反応賞をあげたい」と書いたのは、そういう意味でもあります。


 この頃思うのは、今ヶ瀬は確かに難しい役だけど、他にも演じられる役者がいたのでは、ということです。

 ブルーリボン賞を獲ったとき成田凌は、

「まだ役に頼ってる」

 と発言しています。

 誤解を恐れずに言えば、今ヶ瀬と言う役は、ある程度の演技力があり、度胸の据わった野心的な俳優なら、そこそここなせたと思うのです。

 もちろん真似事とはいえ同性への口唇奉仕の場面までありリスキーですが、ショッキングな分、注目度は高いし、オイシイ役だと言えます。

「他の俳優に今ヶ瀬を演じられるのは絶対にイヤだった」と成田凌が口にするのも分かる気がします。


 さて、恭一役。

 なかなか決まらなかったんですよね。

 脚本担当の方が、大倉忠義を思い浮かべて書いていたので、監督は、

「大倉はアリやね」

 と思った。

 同世代の俳優は、精神的なマッチョ」が多く、そこがネックだったとか。

「俺は男だ」感が強すぎるということでしょうか。

「大倉はニュートラル」

 と監督は口にしています。

 確かにそんな、力の抜けた感じがありますよね。


 今ヶ瀬は他の俳優でも、と言いながら。本編を見てしまうと結局、この二人以外、考えられない、となってしまうのですけど。

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