(79)わからないことだらけ

 本日、1月16日で、本作について書き始めて一年になります。11日からアマプラで配信が始まり、書きたい気持ちが爆発してしまいました。

 今は別の配信サービスでも見られるそうで、その分、新たに本作に接して何かしら思う方が増えてくれると嬉しいです。

 公開から1年4か月もたつのですが、今もこの作品の全貌が掴めないような。色々書きましたが、最初の頃のは浅すぎて読み返すのも恥ずかしいです。わかったつもりでいましたが、ぐるぐる周囲を回ってただけかもしれません。

結局、私は「窮鼠はチーズの夢を見る」について何もわかっていない、そのことを前提に、わからない点について少し書いてみますね。


 冒頭、寿司屋のシーン。

 恭一は実に普通の男というか、不倫しても男なら当然、みたいな感じです。調査でばれたから多少は神妙に、してないか。

 今ヶ瀬は最初から、調査結果を明かさない代償としてキスを求めるつもり、相変わらずの先輩を見て、ためらうことはないと気持ちを決めたでしょうね。

 ラストの恭一には、明らかに変化が見て取れます。エンタメの大原則として、主人公は変化しなければならない。その点、実に王道な脚本なのですが、何故か恭一を終始クズ扱する方もいらっしゃるかと。


 なんでもなさそうに包丁を使いながら、今ヶ瀬に尋ねる恭一。

「恋人とはうまくやってるの」

「とっくに別れました」

 今ヶ瀬がこう答えた瞬間、包丁の音が止まる。料理はどうでもよくなり、そっか別れたんだ、と、恭一は嬉しくなっちゃった?

 前にも書きましたが、過去であっても自分を好きになってくれた相手は、いつまでも自分を思っていると、男は思い込むような気がします。電話で今ヶ瀬の同棲相手が出てきたときは、軽い喪失感を覚えたであろう恭一。しかし今や今ヶ瀬はフリー。

「温泉か、いいな」

 こんなややこしい後輩と、温泉に行く気満々。知佳子には旅行でも行こうか、と提案して、実現する前に別れを告げられてましたね。今度は、あちらからのお誘い。


「出会った時からそう言ってくれればよかったんだ」

 はじめて恭一を見たとたんに好きになった。その時に要らないと言ってくれればよかった?

 それって不可能ですよね。

 恭一にとっては単なる新入部員、今ヶ瀬が何者なのかもわかっていない。今ヶ瀬も自分が何言ってるかわかってないのか、とにかく矛盾してます。何も始まっていない出会いの時に「おまえは要らない」と恭一が言えるはずはないから。


「戻ってくるって信じてるんですね」

 たまきの言葉に、恭一は答えるつもりもない。というか心はもう、今ヶ瀬と行った海に飛んでいる、今ヶ瀬のことしか考えていない。場面転換寸前のアップの放心したような顔は、そういうことだと思います。

 悪いけど、たまきの存在は恭一にとってゼロになってます。別れを告げつ必要があるから会った、それだけ。今ヶ瀬が戻ってくることは恭一にとって必然だけど、それは、おまえには関係ないのだtと口には出さずとも顔にはっきり出ている。たまきも諦めざるを得なかったでしょう。

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