(67)ひとりひとり違う

 本作への評価は、賛否両論。毛嫌いする人もいれば、私のように一年だっても忘れられず、何度見ても、これでいいや、とはならない人も。

 そこそこヒットしたようですが、間違いなくリピーターの力でしょう。私はシネコンで8回見ましたが、まだまだ少ない方かと思います。


 始めは、作品への評価が気になりました。特にゲイの感想。これがまた見事にバラバラですね。最高すぎる映画、と絶賛する人もいれば、単なるBLだと全否定し、怒り出す人など、さまざまです。

「あさはかなゲイビデオ」とのレニューーでは「挿入がスムーズすぎる」のが気になったご様子。しかし、一応、恭一も痛そうではあったし、痛がる様子を延々と映すわけにいかない、それこそゲイビデオじゃないんだから。

 原作ファンの女性も「ゲイビデオ」と書いた人がいました。ベッドインが突然過ぎて感情描写がない、とお激怒でした。

 そうですかねえ。


 恭一が帰宅。「ただいま」に返事もしない今ヶ瀬。思い詰めている様子。

「映画?」には、「うん」と上の空、何か考え続けている。

「オルフェ」の二人が「ジュテーム(愛してる)」と言ったところで「俺と寝てください」。

 言おうかどうか迷っていたんだな、映画の二人に背中を押されて口にできたんだな、と、何度か見て、腑に落ちました。一度や二度見ただけでは理解できない場面が多いは確かです、が、それでも、いきなりベッドシーン、という見方は残念。

 後半のベッドシーンはやや唐突感がありますが、その前に、路上での辛いやりとりがあり、その果てによりを戻したのだから。熱がこもって当然でしょう。


 結局のところ、こう解釈するしかないのだと思い当たりました、本作への評価はひとりひとり違う、それが当たり前なのだ、と。


 付け加えるとすれば、自分の物指で決めつけることへの疑問。

 ゲイのレビューで気になったのが、「ヘテロとゲイのカップルはいないのですが」というもの。

 いないと言われても、監督はヘテロとゲイのカップルから話を聞いたというし、私もヘテロ男性と暮らすゲイのインタビューを目にしたことがあります。

「彼はヘテロなので、女性にとられるのが心配」

 とのことでした。

 いない、と書いた方は、周囲に事例がなかっただけでしょう。確かに珍しいケースでしょうが、現存するのは確か。ゲイだからといって、全世界のすべてのゲイの事情に通じているわけではない、そんなの不可能です。


 私も、特に本作を見てからは、無意識に決めつけていたことが多いと気づきました。ゲイのレビューに対して身構えてしまうのもそうですし。「男はこう、女はこう」と断言しないように気を付けてます。

 人間は、ひとりひとり考え方が別、ジェンダー、セクシャリティもしかり。そのことを念頭に、書き続けていきたいです。

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