(66)二番目でいいんです

 今ヶ瀬と恭一の事後。

 揺れるカーテン、

「だっさいカーテン」

 例によって皮肉な今ヶ瀬の物言いに、恭一は同意します。

「だな」

 この後の展開が、ふと、たまきの母と常務。若き日の二人に、思えてしまったのです。


「ひどい男ですね」

 奥さんがいるのに私に手を出して、妊娠させて。

「じゃあ、彼女(奥さん)と別れてください。

 別れられるわけないか」


 恭一ではないので、常務はこう答えます。

「すまない。ちゃんと認知はするから」


 以上、妄想おわり。

 失礼しました。


 実際には、恭一は明日、たまきと別れると明言します。

「嘘だ、らしくないよ、無理ですよ」

 全く信じようとしない今ヶ瀬。

「別れてください」は、確かに冗談めかして言っていたけど、なんなのだ、この反応は。

 初見では、本当にたまげました。


 翌日、今ヶ瀬は消えたけど、恭一は、たまきと別れます。

 ここで、またまた驚く私。

 出ていった「前の相手」が戻ってくるまで、そばにいさせてほしい、と懇願する、たまき。

 別れるなんて嘘だ、と言わんばかりに、いなくなった今ヶ瀬。

 婚約解消のに、出ていった相手が戻るまで、でいいから、交際を続けたい、たまき。

 なんなの、この二人は。

 互いに「二番目でいい」と言い張っているような。


 その態度だけ見ると、似ている二人。もちろん、「二番目」でいたい理由は違いますが。

 恭一の胸で、たまきが言った言葉。

「あまりにも相手を好きになりすぎると、自分の形が保てばくなって壊れるんですよね」

 唐突すぎるし、たまきには似合わないセリフ。母親の受け売りだろうとコメントいただき、納得しました。今ヶ瀬になら、ぴったり、恭一を好きすぎて壊れっぱなしだから。

 この場面、たまきが今ヶ瀬に成り代わって口にしたような気がします。恭一の部屋、しかもベッドの上。本来は今ヶ瀬のいるべき場所なのです。


「好き」ってなんだろう、考えてしまいます。

 夏生は今ヶ瀬に尋ねました、「恭一のどこがいいわけ?」

「理由なんてないでしょ」が、今ヶ瀬の答え。

 そう、理由なんてない、一目で恋に落ちるには。


 ファンデーションのことで苦しんだのは、恭一を独占ししたかったから。でも結局、お互いのために別れを決めた。

 決めたはずなのに、頭では理解していても、心は違う。ストーカー行為を止められない。よりを戻し、「一緒に暮らそう」と言われたら逃げてしまう。恭一の「例外」になることが、重すぎた?

 二番目でいることが許されないなら、離れていくしかないと?


 たまきは、壊れるほど恭一を愛してはいなかったと思う。そんなしんどい思いを知る必要はない、早くいい人見つけてくださいね。


 常務は国広富之が演じていましたね。どこかで見たことあるなあ。

 エンドロールで、あら、トミーだったのね。時の流れは残酷、と思いつつ、若い頃の美貌を知っているだけに、もてて当然、と思った次第です。

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