(65)原作は読まない

 映画を見て満足なら、原作は読まない主義です。

 ましてや、原作を読んでから映画を見る、は、まずありません。映画は、何も知らずに見た方が驚きが大きいからです。


 とはいえ、ここまではまった「窮鼠~」の原作には興味がありました。このストーリーを世に送り出してくださったこと関しては、限りなく感謝しております。

 監督によれば、原作には、言葉があふれている。削ぎ落すことの連続で、脚本の完成に二年、と聞いて、納得です。あの脚本だけで私には十分でした。

 原作コミックスの表紙画を見て、苦手な絵柄、と実感。あるレビューでは「絵で魅せるタイプの作家ではない」と。しかし絵は漫画の肝でしょう。絵以外の何で魅せる? 


 ここに至って、ようやく見開き二ページだけ、ネットで原作を見て、ドン引き。

 紙面を埋め尽くすモノローグと吹きだし。空間恐怖症か。

 とても苦手な形式です。あきらめて、あらすじだけ調べました。

 熱狂的なファンが多い原作ですが。中には疑問を抱く方もいて、

「あまりに説明と解説が多すぎる」

 と。

 だから私は苦手だったんだ、納得です。


 名言だらけと監督は言ってましたが、私はそんなの求めません。

 説明と解説が、お好きな方もいるのでしょう。なんといっても分かりやすい。

 映画の方は、真逆です。

 厳選されたセリフと映像表現だけで、手取り足取り懇切丁寧にセリフ、モノローグを駆使した映画、漫画でないと受け付けない向きには、本作は不評で当然かも。

 原作では、何の苦も無く、キャラの心情が分かるようです。しかし、私は、それでは手ごたえがなさすぎて嫌です。

 もし本作が、そのような、わかりやすい映画だったら、私は一度見て、おわりだったことでしょう。


 原作はけっこう前の作品ですよね。実写化の話はいくつもあったと思われますが、なかなか実現しなかった。愛読者を失望させないために?

 美化する企画もあったそうで、却下です。月日は流れ、ついに、行定監督が八割の台本(海のシーンで止めさせた)を提示し、映画化へ。

 辛口の脚本です。原作者は、それでいいと思ったのか。


 私は原作のラスト、指輪交換の約束をするとか、には、げんなりしてしまいます。ハッピーエンド、本当にそうなのか。

 もしかして原作者は、熱狂的なファンに忖度して、そんなラストにしたのでは、と妄想。恭一と今ヶ瀬を幸せにしてあげて、という希望が多数、寄せられたと想像するからです。そのプレッシャーは相当だったのでは。


 そんなこんなで、原作だけが好きな皆さんには申し訳ないですが、私は原作は読みません。映画だけを見つめていきます。

「原作もぜひ読んで」というレビューを見かけるたびに、心の中で、こうつぶやいてしまいます。

「それだけは、勘弁してください」

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