(64)奇跡のキャスティング
ぜひ行定監督に、と、持ち込まれた本作映画化の企画。キャスティングに当たり、監督はまず、成田凌に目を付けました。ナイスですね。恭一役もアリだった、とも言われますが、今ヶ瀬に、と思っていたのでは。年齢的にも妥当です。
しかし恭一役が、なかなか決まらなかった。暗礁に乗り上げていた、とまで監督は言います。一時は成田凌が恭一を、と考えた。年齢をいじるというのはよくあるそうですが、「お互い、そんな年だろ」に説得力がなくなります。
成田凌は、恭一役には、自分より、もっと素敵な人がいるはずだ、と待ちました。ナイス判断です。
それでなくとも成田凌は逆サバを読んでいます。今ヶ瀬は二十七歳なのに、実年齢、二十五。
それに、恭一は、今ヶ瀬が一目で恋に落ちる相手です。それだけの魅力、説得力のある男優でなければ。正直、成田凌が恭一だったら私、本作を見なかったかもしれません、大倉忠義が既婚者でゲイの後輩とどうとかいう設定に惹かれたのですから。
結局、脚本家が大倉忠義を想定していたこともあり、見事、恭一役に決定。
文句ありません。成田凌も、とても嬉しかったそうですね。そういう存在でないと、恭一は務まらないのです。
アイドルでもある彼は、オーラがすごい。誰かが彼の微笑を「ほどこしスマイル」と表現し、あまりにぴったりで笑ってしまいました。
今ヶ瀬を勧誘したときの、あのスマイルが、まさにそれですよね。新入生に、最高にキュートな笑みを施してやる。ここで今ヶ瀬の運命は決まってしまいました。
原作ファンの間では、「今ヶ瀬が成田凌なのは違う」と言われたとか。原作の今ヶ瀬はド少女漫画キャラ、超美形。ファンンの期待に応えるなら、顔重視で役者を選べばよかったかもしれませんが、行定監督は、そんなことしません。女たちを凌駕しろ、と成田菱を焚きつけ、彼は見事、期待に応えました。「化け物じみた演技力」と評する向きもありましたね。
恋する今ヶ瀬が憑依したかのように、女性キャラすべてを嫌い、彼女たちが大倉忠義と話すだけでムカつき、カメラマンに「成田、かわいいなあ」と言わせたのです。
女性陣では、やはり夏生役の、さとうほなみさん。
レストランでの対決シーンは、何度見てもにやにやしてしまいます。夏生役も、なかなか決まらなかったと聞きますが、どんぴしゃの女優が、土壇場で現れる。彼女を得て、中盤のクライマックスが引き締まりました。
結局、大倉忠義が恭一、成田凌が今ヶ瀬だったからこそ、私はこんなにも「窮鼠~」の沼にはまった。この二人以外の恭一、今ヶ瀬は考えられない。
恭一と今ヶ瀬を演じた、なんて言い方では表現できません。役を生きた、というのも甘い気がする。大倉忠義はあの時、恭一だった。成田凌はあの時、今ヶ瀬だった。
だから、当然、撮影が終わってしまえば、もう恭一も今ヶ瀬も現世にはいません。映画の中にしか、存在しない。寂しいですが、逆に言えば、映画を見れば、いつでも彼らに会える。
一年と少し、二人に付き合ってきて、さんざん考察し、それでも、まだ秘密がある、気づいていない部分がある。と、こうして駄文を書き連ねずにはいられない。
とんでもない映画と遭遇してしまったのですが、そのとんでもなさは、大倉忠義の恭一、成田菱の今ヶ瀬。この奇跡のキャスティング故だと実感しております。
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