(61)ずっと苦しかったろ
平手打ちされた恭一は、うつろな目で、
「ずっと苦しかったろ」
今ヶ瀬は泣き崩れます。
監督は、こんな目、見たことない、と言ってましたね。何かが抜け落ちたような、とも。
このセリフをはじめて聞いた時、意外に思いました。
恭一は、あまり感情を表に出さない。何を考えているのか、よくわからない。だけど実は今ヶ瀬を、こんなふうに見ていたんだ。
「俺は幸せだったんだけどね」
「本当に苦しそうだったからね。もっと早く別れてあげればよかった」
たまきとの初めての朝。恭一の心情の吐露も、唐突な気がして。
別れが来る前に、なんで、こうした言葉をかけてやれなかった? 「バカだねえ、おまえは」だけじゃなくて。そうしたら今ヶ瀬も幸せを実感できて、たまきとの仲を、あれほどまでに疑うこともなかったかもしれない。
でも、前にも書いたように、成田凌は、「今ヶ瀬は勝手に行動し、勝手に傷つき、勝手に怒ってる」と。今ヶ瀬って本当にそういうキャラ。
「お前がいてくれて幸せだ」と恭一が告げたところで、信じられなかったでしょう。
今ヶ瀬は、苦しくても別れたくはなかった、はず。「あなたじゃダメだ」
は別れを決定づける言葉ではありますが、恭一の反応次第では違う結論になったのでは。
しかし、恭一は「おまえがダメだっていうならダメなんだろう」と、あっさり受け入れます。今ヶ瀬の気持ちを尊重している。今ヶ瀬の苦しみをこれ以上、見ていられなかttから。
それをまた、今ヶ瀬は裏切りと受け止め、平手討ち。恭一は怒りもせず、「ずっと苦しかったろ」。これで緊張の糸が切れるわけですが。
あの涙は、なんだったのか。
苦しくても、そばにいたいのに、結局、ダメだった。でも恭一は自分を拒否したわけではない。苦しんでいることを痛いほど理解し、開放してやろうと思った。それを思い知り、今ヶ瀬は、本気ではなかった別れを受け入れようと決めた、のかなあ。
言動では思いを伝えられない恭一。悩み苦しみ、怒ることでしか思いを伝えられない今ヶ瀬。
こんな二人が、すんなりハッピーカップルとして生きていけるはずはなかったのですが。
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