(60) 起承転結4人の男
恭一をめぐる4人の女について(20)で書きましたが、今ヶ瀬にも4人の男が絡みますよね。
登場順に、まず、恭一からの電話に「誰だよ」と口をはさんだ、同棲中らしき男。
「理由」「別れる」「離婚」なんて言葉を聞かされたら、しゃしゃり出てきて当然かと。
あの電話、今ヶ瀬にとっては渡りに船だったはず。「昔からずっと好きだったひと」と伝えて別れることができた。
今ヶ瀬が引っ越し祝いに来た時、恭一は「恋人とうまくやってんの」と探りを入れます。「とっくに別れました」の答えに、ほっとした様子。
やはり「起」にふさわしい存在です、恭一は妻の知佳子と、今ヶ瀬はこの男と別れることで、次の展開に進むのですから。
この流れを受けて、「承」は、高杉。今ヶ瀬とは「古いつきあいの友達」と自己紹介。
一緒にタイ料理屋に現れたのは「久しぶりに電話があってメシに誘われた」と今ヶ瀬は言ったけど、これも怪しい。夏生と恭一に割り込むには、一人より二人の方が偶然っぽいし、恭一に嫉妬させる意味もありそう。
案の定、「あの男なんだよ」と、今ヶ瀬は単なる後輩のはずなのに、自分のものと内心、思っていただけに。
「転」は、映像では一切出てこない、今ヶ瀬の初体験の相手。まさに今ヶ瀬にとっては転機となった存在。この先輩がいなかったら、もしかして今ヶ瀬はゲイにならなかったかもしれません。
この時の恭一の嫉妬はすごかったですね。
夏生が「どんな人なの」と尋ねると恭一は「やめろよ」。聞きたくないのです、今ヶ瀬の過去なんて。この言葉を発した時点で夏生の負け、と指摘された方もいました。
「恭一は知ってるの」には「知るか、そんなの」
この投げやりな言い方に、今ヶ瀬はカチンときたのか、「シャワー室で後ろから」
恭一は再度「やめろよ」とブチギレ「お前を選ぶわけにはいかない」と口にしますが、今ヶ瀬への仕返しだったのか、と想像したりします。聞きたくないことを聞かされたから。考えすぎとは思いますが。
特典映像では夏生が、「あんなふうに嫉妬するんだ。はじめて見た」
なぜ嫉妬するのか、ただの後輩なのに。この時、すでに恭一の心は相当、今ヶ瀬に傾いていたのでしょうね、自分では認めていなくても。
「結」は、今ヶ瀬が出ていき、たまきと別れ、恭一が灰皿を洗っている間に挿入された、今ヶ瀬のいま。寝ようとして、できなかった男。
その存在を、恭一が知ることはないでしょう。
恭一でなければ、今ヶ瀬はダメなんだと思い知らされる場面として、私は理解しています。
ここでは、今ヶ瀬は「窮鼠」に思えます。恭一が欲しいという自分の本心に追い詰められ、恭一という甘美なチーズの夢を見る。
もし、この男のことを知ったとしても。もう恭一は嫉妬しないと思います。今ヶ瀬の苦しみも不可解さも面倒くささも全部、まるごと受け入れる覚悟ができているからです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます