’(59)なんで電話してきたんですか

 瑠璃子と切れてなかったことがバレ、怒った今ヶ瀬は恭一の部屋を出ていく。

 一週間後、恭一が電話。

「どうしてる。まだ怒ってるのか」

「なんで電話してきたんですか」

 が、今ヶ瀬の答えでした。

「だよな。じゃあな」

 と言いつつ、切らない恭一。

 今ヶ瀬も、それが分かっている。駆け引きなのか。結局、かなり遅い時間に、食事をする二人。


「何の用ですか、こんな時間に女を呼び出すのも面倒でってことですか」

 相変わらず、斜めな今ヶ瀬です。本心は、

「好きな人に呼ばれたら、すぐ飛んでいくような男なんですよ、俺」

 と。来た理由を告げたりしますが。恭一、嬉しそうでしたね。


 結局、恭一の部屋までついてくる、今ヶ瀬。

 上がっていいんですか、って。いけないなら、恭一は店で別れたと思うのですが。

 結局、同居が再開してしまいます。


 何故、恭一は、今ヶ瀬に電話したのでしょうか。

 電話は、二度目ですよね。

 最初は、知佳子に離婚を言い渡され、怒り心頭、今ヶ瀬は「お元気で」と、これっきりみたいな言い方をしますが、その後、恭一はホテルでのキスや、今ヶ瀬との出会いを回想する。

 二度目の電話は、明らかに、恭一がかけたくて、かけたんですよね。関係を修復したくて。今ヶ瀬が出ていくときも、引き留めていたし、戻ってきてほしかったんでしょうね。

 離婚は、結婚の十倍、エネルギーが要ると聞きます。知佳子は、一年前から別の男がいて、浮気調査依頼するなど、恭一を見限り、離婚に向かって突き進んでいました。が、恭一にとっては寝耳に水。今ヶ瀬の要求を受け入れたのも、離婚回避のためでした。しかし、この結果。


 喪失感は相当なものだったはずで、そこへ、するりと入り込んできたのが今ヶ瀬。引っ越し先に来た時も、いやだったら追い返しますよね。それが、あっさりと招き入れる。

 その後も今ヶ瀬ペースで暮らしは続きます。家事もやってこれて便利、それなりに体の関係もあるし、一緒にいて負担じゃないし、今ヶ瀬が消えて、寂しくなったのかなあ。


 早朝、ソファに寝ころんで今ヶ瀬の灰皿に目をやるシーンは、印象的でした。

 まだ、この気持ちがなんなのかは、わからない。でも、ぽっかりと心に穴が開いたような。

 やっぱり、あいつがいないと寂しい。

 出来れば、戻ってほしい。

 そんな気持ちに耐えきれなくて、今ヶ瀬に電話しちゃったのかな、と考えたりします。

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