第30話 勇者復活!!・・・さとみはっけん
毒まみれの鏡を拾って来てサンブルクに帰って来た。
帰りの戦闘は割れ物を持ってるって事もあって基本は逃げまくった。索敵重視の距離取りだわな、位置的に見つかりそうだなって思ったら、明後日の方向に石ぶん投げて注意を逸らしてソソクサと移動ってな具合だ。逃げるが勝ちってやつだわな。
おかげで行きよりは早い帰宅だ。ぼちぼち街並みが見えきた。
街の入り口には、門番に尻尾を振りながら撫でられている犬姫様が見える。意外と可愛がられてんのな。なんつーか、それでいいのか王女様と思わなくはねぇが。まあ、出迎えは感謝しとくか。
門番に一声かけて、犬姫様を連れて家へと向かう。
「クウゥーン、クウゥーン」
元に戻してやるなんて具合に大見得きっちまった後の帰宅だから、気になるんだろう。さっきからしきりに何かを問いかけてきやがる。
「おぅ、用意はできてんぞ。あとは家に帰ってからな」
俺の返事を聞いて犬姫様は尻尾を上にあげて全力で家に向かって走り出す。柴犬かってーの前方走ったら、尻丸見えなんだが。
・・・恥じらいはどこ行ったんだってぇの。
そんなロマンティック浮かれモードの犬姫様を先頭にして家へと向かった。
家に着いた。エルザと2人で武器防具の汚れと鏡にこびりついた毒を落として家に入った。さっきからまとわりついて来る犬姫様をなだめつつ、エルザに指示して復活ってぇのか?解呪。ああ解呪だな。まあ、そいつの用意をする。
「エルザ、犬姫様用に風呂わかしておいてくれ、後着替えも出しておいてくれ」
「わかりましたわ!」おっふろおっふろマスターとおっふ・・・♪
オリジナリティ溢れる変な歌を歌いながら、エルザが風呂を沸かしに行った。このタイミングで2人で入らねぇってーの。
犬姫様用にきまってんじゃねぇか。
色々とみせられねぇよっての。
なんかどっか抜けてんのよな。
・・・いいんだけどよ
準備に消えたエルザを想い三段活用ならぬ三段つっこみしつつも、犬姫様から姫さんになった時用の食事を作る。どーせマシなもん食えて無かっただろうしな。
呪いの仕組みはわかんねぇけど、犬と人じゃ使うカロリーが違げぇと思うんだわ。ってなわけで飯を作っておくことにする。
今から買い出しに行ったら犬姫様も萎えるだろうし、めんどくぇからあるものでいいな。それに胃がうけつけねぇってのもあん、ろう。
手を入念に洗ってから、適当に葉っぱとパンを千切って粥にして、肉の切れ端をぶっこんで火にかける。こんなもんでいいだろう。
サクサクと適当飯を作り終えた辺りでエルザが風呂の用意から戻って来た。
「用意出来ましたわ、大分温まって来てるのでもう入れると思いますわ」
「ん、すまねぇな。んじゃ解呪といきますかね」
「わん!わんわん!」
「でだ、姫さん。あんた今裸だよな?呪い解いたら裸のまま人になると思ってるんだが、ここまでいいか?」
「わん!」
「ってことで、解呪自体はエルザにやってもらって俺は席外しておこうと思うんだがいいか?」
「くーん。・・・わん!」
「わかったってとこか」
「わん!」
「んじゃ、エルザ。すまねぇが姫さん連れて風呂場で解呪してくれ。方法はこの鏡に姫さんの等身を写すだけでいいはずだ」
「マスターは一緒に入りませんの?」
「姫さんが居るからな、そいつは後でな」
っつーか、普段から一緒に入ってねぇだろう。なんのアピールだってぇの。
「っ!わかりましたわ!!さぁ一緒にイキますわよ!!」おっふろおっふろマスターとおっふ・・・♪
エルザは犬姫様を連れて風呂場へと変な歌を歌いながら向かっていった。あーあれか?女が家に増えるから牽制ってやつか?・・・なんじゃそら。
風呂場の方から、変な歌と水の音がしたと思ったら。小屋内に光が一瞬走った。
「ん、解呪できたんかな」
「っぐ、ヒック・・・もどにもどぢまぢだ」
「よかったですわね。さあ体を洗いましょう」
「漏れ聞こえる範囲では、うまくいったみてぇだな」
後は、風呂あがりに飯食わせて。任務ってーかお節介完了ってな感じだな。
これで姫さんの解呪は成功ってことで、勇者の血筋が復活ってわけだ。サマルカンドの王子とサンブルクの王女が揃うはずだ。ローランドだけ居ねぇって具合だが。まあなんとななんだろう。ローランドの王子はただの脳筋だったしな、適当な肉壁を用意すりゃなんとでもなる。
んなわけで、これからの予定は姫さんをサマルカンドの王子に引き渡しってこったな。
こっから丸投げってのも目覚めが悪りぃから、送り届けるとこまでやっちまいますかねぇ。
さてへたれ棺桶王子のあいつは今どこにいんだ?
・・・まだあの洞窟をほっつき歩いてたりしてねぇだろうな。
っとっと、とりあえず飯をテーブルに並べておくか。
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