第29話 エルザ優秀!!・・・よしゅうぐみ

 家を買って数日たったところで、生活も大分落ち着いたので、ぼちぼち犬姫様を元に戻そうかと思う。

 

 ってなわけで、今日のモンスター狩りの準備をしているエルザへと声をかけた。

 

 「エルザ、今日はちっとばかり遠征するぞ。前に見た南下した所にある毒の池までだ」

 

 「わかりましたわ、鏡を取りに行くのですわね」

 

 「すげぇな、その通りだ。調べたのか?」

 

 「ええっ当然ですわ!動画を見て事前予習しないでレイドに参加するのは地雷ですわ!!」

 

 おいおい、何処のネトゲってか今はソシャゲか?そいつぁまあいい、とりあえず人生がゲームで埋め尽くされてるガチ勢みてぇな事言うなっつーの。

 

 「おっおう、まあ程々にな」

 

 「はいっとりあえず毒消しと着る物ですわね!」

 

 ああっ服ねぇとまじぃな。今は毛だらけだがたしかに裸だわな、人に戻ったら犬姫から痴女姫に昇格しちまうな。その昇格はオーラなバトラーの押せ!並みに熱いわな。

 

 「んじゃ悪りぃが、15位の小娘が着る服を買って来てもらえるか?狩りの用意は俺がしとくわ」

 

 「はいっ行ってきますわ。・・・えっと赤い服でしたわよね・・・それから杖と・・・」

 

 おいおい、あいつ原作完璧じゃんか。知らねぇうちにダウンロードだっけかで覚えたんだろうな、チートが過ぎんだろ。まあいいけどよ。

 

 こっちの話を聞いていたのか、室内でくつろいでいた犬姫様が足元に来て申し訳なさそうな顔をしつつもワンと一声鳴いた。

 

 エルザの買い出しを待ってる間に犬姫と事前に話し合いをしておく。話す手段?そんなものは文字表つくって手っていうか足を置かせりぁあいいだけだ。

 

 「姫さんよ、人に戻った後に行く所はあるのか?」

 

 犬姫様はしばし迷いながら、足を置いていく。ケツはこっちに向けねぇように努力してる。

 

 「あ・り・ま・せ・ん」

 

 「だよなぁ。城はおとされたんだろう」

 

 「は・い」

 

 「ってことは、もう一人の勇者なんだっけサマルカンドだったか、あいつを頼るのか?親戚だろたしか」

 

 「そ・れ・が・い・い・か・も・し・れ・ま・せ・ん」

 

 「まあ普通に考えればそうだよな」

 

 「は・い」

 

 「宿屋だったか酒場の協会を頼るってのはどうなんだ?なんだか勇者支援とかしてんだろ?」

 

 「そ・れ・も・し・よ・う・と・お・も・い・ま・す」

 

 「ってことは、宿屋協会に顔出してから王子と合流ってつもりか」

 

 「は・い・そ・う・し・よ・う・と・お・も・い・ま・す」

 

 「ん、方針はわかった。とりあえず俺とエルザで元に戻す鏡を取って来るから、家で待ってろ」

 

 「あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す」

 

 犬もハラハラと涙を流すのかよ、そいつはまだ先だからとっときゃいいのに。ちっと湿っぽくなっちまったから狩りの用意に戻った。後ろで犬がキューンキューン言ってるが聞かなかった事にしておく。

 

 買い物から戻って来たエルザと一緒に街を出て目的地に向かう。

 

 目的の場所は距離的には近いんだが、山脈が邪魔をしてて大きく砂漠側に回り込んでから行かなきゃいけねぇ。

 

 「マスター砂漠ですわ!タクラマカンですわ!!」

 

 それ覚えると言いたくなる名前だよな。死の砂漠ってな。

 

 「この場所でしか出ねぇモンスターもいるから気を付けろよ」

 

 「はいっサソリですわよね」

 

 予習バッチリかよ。有能かってーの。まあ有能だが。

 

 「来ましたわ!!バックアップをお願いしますわ」

 

 「あいよっ」

 

 って言っても固てぇだけの、さそりだからなぁ。バックアップもクソもねぇ。ってなわけで、頭側に飛び込んだエルザの後ろから追従して、尻尾の部分をはじくように大剣を叩きつける。

 

 「モーフィングハンマー!!!」

 

 エルザはハンマーを持ったまま丸まりながら回転して頭を叩き潰した。どんな体制だよ!んで今日は京都方面か、惑星調査する系のバトルスーツ女子だな。とりあえずゴメンしとけゴメンって、マジで色々怖いから。

 

 そんなわけのわからん戦闘をこなしつつ、迂回路としての砂漠をささっと抜けて森林ゾーンへと到達した。

 

 森のモンスターは生息も生態も一緒なのでエルザにほぼ任せて、適宜手伝いして進む。

 

 「インパクトプレート!!」「クラッシュデビル!!」「クラッシュドラム!!」

 

 おー正しくハンマースキルだなぁ、クラッシュ系多いな、まあ仕方ねぇわな仕様だ仕様。ってな感じでサクサクと森を進んで毒の沼地へと来た。

 

 近くでみると結構ヘドロだな。入りたくねぇ、そしてキラリと光る鏡。

 

 

 ・・・分かりやす過ぎやしませんかねぇ

 

 

 まあいいか、とりあえず適当にそこらへんの木を折って、ロープを使って鉤状の長い棒を作ってっと。

 

 えっ?毒の沼に入らねぇのかって?やだよ。汚れるし毒食らうし。

 

 「マスターは天才ですか!さすマスですわ!!」

 

 おっおう、でも現実に目にしたら普通の人はこうやって取ると思うぞ。後さすマスってなんだ。さすマスって語呂悪すぎんだろ。

 

 ある種のイベントクラッシュなのかもしれねぇが、今日はクラッシュの日って事でいいだろ。わけわかんねぇが。

 

 とりあえず鏡ゲットってこった。後は帰って犬姫様を元に戻せば終わりってな寸法だ。

 

 「よし、目的は達成したんで帰るぞ。予習しての用意ありがとな」

 

 「はい!次回のイベントも頑張りますわ!!」

 

 んー、次回のイベントなんてのはねぇんじゃねぇのかねぇ。

 

 犬姫様を元に戻してリリースして後しらねって感じなンだわ、これが。

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