第28話 勇者居住!!・・・かっちゃった
サンペタに着いてからの数日は、近辺の魔物を全滅させる勢いで、朝早くから夜遅くまで周辺の魔物を倒しまくった。
エルザから何発のトマホーク的なブーメランが飛んだかは数えて無い。
大量討伐をするには理由があった。あっちの大陸とこっちの大陸では、敵の強さが違げぇ。こっちのモンスターが結構強えぇってことで、俺たちの強さをこの街の基準ってぇ言やいいのか、まあ適正レベルってやつに合せる必要があった。
まあ一応、犬姫様にも数日で元に戻すって約束したしな、ちょっとだけ無理しとくかってとこだ。
大量の魔物素材で小銭とはいえねぇ額が溜まったあたりで、エルザと相談して家を買うことにした。
「エルザ、この街で家を買って生活しようと思うんだがどうだ?」
「活気もあって変な人もいませんし、いいと思いますわ!」
「ん、りょーかい。んじゃサクッと買いに行きますか」
やけにすんなり了承したエルザが気になるが、まあ後で聞けばいいだろうって事で道具屋のおっさんに家の手配を頼んだ。最近大量の魔物の素材を売り払ってるってのもあって懐具合も透けて見えてるだろうしな。
エルザがロフト付き物件だの駅近が必須ですわとか言ってたが、ロフトも駅もねぇンだわ。
とりあえず手配してもらった空き家を数軒みてまわったが、基本は石造りで土足で歩いて、夜は底冷えするような建物だ。まあ西洋風っちゃーそうなんだが、どうも日本人には馴染めねぇ。
まあどれも一緒か、なんて思い始めたタイミングで紹介された家に決めた。
「こことかどうですか?最近犬が近くに住みだしてますが飼いならせば番犬くらいはしてくれますよ」
おう、これだ。犬姫様を番犬ってことで家に合法的に入れれるわ。
「エルザ、ここにしようと思うがいいか?」
「うーん、ロフトはございませんのね」
そのロフトに対するこだわりはなんだよ。ロフトってのは、上京したての田舎者がマンション選びで失敗するやつだっつーの。
「基本は石造りだから、必要なら作っちまえばいいだろ」
「そうですわね!ロフトが無ければ作ればいいのですわ。さすがマスター天才ですわ」
「おっおう」
なんか、中身のねぇ持ち上げ方された気がするがいいか。
「ああっ、すまねぇ。この家にするわ。犬は何回か餌あげた事あるし、ちょっと躾て番犬にでもするわ」
「では、こちらの建物ということで・・・」
道具屋のおっさんに、皮袋に入った金の半分近くを購入代金として払っておいた。あとは手数料として住民登録みてぇな事が必要だって言われたが、サンペタの城の状況が状況なので、今は個別に街で処理してるみてえな事を言ってたのでそれも任せる分の代金ってこったな。
アッチで言う所の登記だの住民登録だの、めんどくせぇ事は丸投げで金で解決って話だな。
家も買ったので宿を引き払う事にしたんだが、宿屋のおかみに「なんだいアンタ達は旅人じゃないのかい?」とか詮索みてぇな事を言われたが少なくない金額を滞在の礼ってことで握らせて黙らせておいた。
宿屋協会の手のかかった範囲からはこれで脱出ってわけだ。
宿屋から引き上げて、新居ってか自宅にへと移動する。途中で犬姫様のピックアップも忘れねぇ。
荷物の移動も終わって家の中を見て回る。買った家は間取り的には1kって感じで最低限の設備はある。その最低限が洋風で机、椅子、ベッド、キッチンってとこだな。
とりあえずシーツだの食器だのと日常に必要なものを今日中に揃えちまうことにした。
街中を歩き回って日用品で必要だろうと思えるものをエルザと2人で揃える。
お揃いの食器を選んだり、カーテンを吟味しながら終始楽し気に買い物をしてるエルザを見ながら、あっちじゃ独身だったが結婚とかするってぇとこんな感じだったのかねぇとか気の抜けた事を考えてる自分に気が付いた。
国からは逃げ切ったと思う。
宿屋協会からも目を付けられてないと思う。
街で数日過ごしたが、勇者なんて言葉を聞くことも無かった。
大量に魔物を倒して素材を降ろしても、稀に強い旅人がそういう事をするって聞いた。
ようやくこの世界で気を抜けるタイミングが来たというか緊張感が薄れ始めた自分に気づいた。
まあ用心には越したこたぁねぇが、しばらくは落ち着いて暮らせるだろう。
犬姫様の扱いしだいだけどな。
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