第27話 勇者到着・・・おいぬさま

 ちっとばっかしイベントがあったものの、無事に関所を抜けて南下する。

 

 大陸を跨ぐ要所ってだけあって、街道は大きな荷馬車が通った跡で歩きやすいっちゃー歩きやすい。こっちが歩きやすいってことは魔物の類も移動しやすいってことだわな。

 

 「エルザ、さっきの魔物襲撃ってのあったし、当分は武器を出したまま移動するぞ」

 

 「わかりましたわ、そういえばマスター先ほどのゴリラが現れたら試したい事があるのですわ」

 

 「ん?あぶなくねぇのならいいぞ。戦闘に関しては細けぇ事は言わねえから好きに戦っていいぞ」

 

 「さすがマスターですわ。おまかせください」

 

 ちっとばっかしポンコツだが戦闘に関しちゃ、ダウンロードといいメイス・ハンマー系の大火力といい実績はあるからな。任してもいいだろう、やばかったらカットインすりゃいいってだけだ。

 

 大剣とかなづちを持った二人組が街道を歩いて南下して行く、途中で商人だったり警備隊の交代要員らしきやつらに遭遇したが、大きな事件も無く二言三言会話をして通り過ぎる。

 

 「そこの人、武器持ったままって事は魔物にあったんかい?」

 「ああっ関所に魔物が出たから用心の為ってとこだ、あんたらも用心しときな」

 

 「む?旅人か、気を付けて行かれよ」

 「ああっあんたらもな、さっき関所で魔物を討伐してたぜ。交代なら早めにいくんだな」

 

 しばらく南下すると、広い草原地帯と簡単な城壁ってか石壁で覆われた街が見えて来た。どこぞの城下町が小さかったから、結構な大きさに見えるな。

 

 「エルザ、もう武器はいいだろう」

 

 「そうですわね、残念ですわ。大猿のしっぽを掴んだら、へなへなになるか試したかったですわ」

 

 「おう、たぶんなんねぇぞ。そいつは宇宙人くらいだな」

 

 んで、エルザは 神保町方面に向かって土下座しておけよっと。

 

 「まあ、そいつはどうでもいいってか深く触れねぇ事にしてだ。武器をしまって街に入るぞ」

 

 「確かめたかったのに残念ですわ」

 

 ・・・こいつ、いつかやる気だな。バードマウンテン先生におこられぞ、俺は知らんからな。

 

 門番の誰何の声に適当に旅人だと答えて、街の中に入っていく。この町もほぼ記憶通りだなっと、そこそこ良い武器が手に入るって感じだったな。武器だけはバージョン違いでいい武器あるから後で見ておくとするか。

 

 「とりあえず、宿屋にいって余分な荷物を降ろして街中を歩くか」

 

 「はい、そうしましょう」

 

 ここの宿屋も宿屋協会とやらに入ってるんだろうねぇ、まあ知らん顔しておこうか。素知らぬ顔で街の入り口近くにある宿屋へと入っていく。

 

 「いらっしゃい2名様かい?」

 

 「ああっそうだ、空いてるか?」

 

 「空いてるよ!何泊するんだい?」

 

 「とりあえずは決まってねぇな、1週間程でいいか」

 

 エルザの方に向き直り確認をする。まあ普通の旅人っぽくする偽装行為みたいなもんだな。

 

 「ええ、マスターにお任せしますわ」

 

 「んじゃ、とりあえず1週間で頼むわ」

 

 その後、朝食だの貴重品預かりだの細々した説明を受けて部屋へと案内された。エルザにはここで呪いで犬にされた王女様が居るってことを伝えておくか。

 

 「エルザ、ちょいと前にサンブルクの城が魔物に滅ぼされたって話があったのは覚えてるか?」

 

 「はい、そんな話もありましたわね」

 

 「んでだ、その城の王女様ってのが、この街にいるんだわ」

 

 「王女様だけ逃げ延びたのですわね」

 

 「まあ逃げれたっていっていいのかわからん所だな、見せしめに嫌がらせを受けてるってとこだ」

 

 「嫌がらせですの?」

 

 「ああ、呪いで犬にされて、この街で誰にも気づかれずに生きてるって感じだな」

 

 「おつらいですわね。でもケモミミ王女ですわ、きっとかわいいですわ」

 

 ああ確かにケモミミではあるなってか、全部ケモノだな。

 

 「まあ、そんな感じで王女がいるはずだから見ておくとしようぜ」

 

 そんなケモミミ談義をエルザとした所で、旅の汚れを軽く落として街に繰り出すことにした。

 

 まあ街の観光ってーか、武器防具の相場確認とお犬様の様子て感じだな。

 

 街並み自体は泉に謎ジジイが居て、教会があって、武器防具道具屋ってあたりだ。街自体は街中に泉があるくらいだから広い。

 

 ・・・こりゃぁ家建てて暮らすってのもありかもしれんな。

 

 なんだかんだと勇者って奴隷ごっこはいい思いしてねぇし、やる気もねぇしな。

 

 魔法の習得って意味だと、エルザが勇者って線も濃いよな、もし魔王討伐なんてのに駆り出されたら勇者エルザとご一行様って具合で、エルザとは別々になっちまうだろうしな。

 

 なんつーかラノベルと異次元転移したけど、相棒だけ勇者でただ一人残された俺は村人Aとして生きました。って話だわな。

 

 ・・・わけわかんねぇわ。高次元なんちゃらってのは今も見てるのかねぇ。

 

 どうにでも出来る筈のどうしようもない事を考えつつ、街を散策してると見つけた。

 

 「おーいたいた、お犬様だなぁ」

 

 「くぅーん」

 

 「マスターこの犬ですか?」

 

 「恐らくそうだな、あーどっすかなぁ」

 

 助けてからの、面倒事ってのは嫌だな。勇者周りの事に関わり合いたくはねぇが、親兄弟を殺されて呪われて犬になって生きてく少女ってぇのも、わりかし可哀そうだしな。

 

 しばし、考え込んでるがエルザからの助けましょう!という強い圧を感じる。こいつ助けてもケモミミ少女にはならんのだが・・・。

 

 「んーあぁ、俺たちはあんたを助ける事が出来るかもしれん」

 

 「くーん」

 

 だが約束をしてほしい、助けた後に勇者だ魔王だって具合に関わるのは辞めてほしい。それが約束できるなら、この地面に書いた印に手を置いてくれ」

 

 王女の手前に、適当な木の枝で【羽が6枚生えている鳥をデフォルメした図】を書いた。いわゆるなんとかの紋章ってやつだな。意外とおぼえてるのな。意外と真ん中の鳥は丸いってな。

 

 犬はしばし迷っていたが、印の上に手を置いて悲し気に、ひと吠えした。

 

 「んじゃ、決まりな。数日中に呪いが解けるように、なんとかやってみるわ。すぐじゃねぇのは勘弁してくれ、近辺の魔物倒して様子みつつってとこだしな」

 

 「くぅーん」

 

 わかったとばかりに頷きつつ返事をした。

 

 「とりあえず、俺たちは街の散策だ。入用なものを揃えたりしてるわ。あんたは好きにしていいぞ」

 

 結局、犬姫様は俺たちの買い物に同行してきた。

 

 店主と俺が話してる間に暇してるエルザにわしゃられてて気持ち良さげにしていたりと、犬は犬で幸せなんじゃねぇの?って思うわ。犬だと魔王とか関係ねぇじゃん。

 

 後どうでもいいが、必死に俺に背後を見せない様にチョコチョコ移動してるのは乙女心だってのは理解しておいてやってもいいと思った。

 

 ・・・ケツ丸出しだもんなぁ 。

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