第22話 勇者遭遇!!・・・しちゃった
試練の洞窟の前でエルザの頼み通りに、少し肩慣らしを兼ねて戦闘をなんて思ったが、周りにモンスターを見かけねぇ。
「モンスターが周りに居ねぇな」
「そうですわね、仕方ありませんわ。少し準備運動をさせていただきますわ」
まあ、最近戦闘も少なかったしな。バーサーカーお嬢様としては体も鈍るってもんだろう。ましてや二刀流ならぬ二棍棒流から「おおかなづち」を一本持ってるスタイルに変えたばっかりだからな。
「おう、これからダンジョンってーか洞窟だから程ほどにな」
「わかりましたわっ」
エルザが準備運動とやらをしている間に、頭陀袋から薬草だの毒消し草を取り出して、服だのベルトあたりの紐に差し込んで取り出しやすくする。これがゲーム的に言う所の装備ってやつかねぇ。まあ、いざって時にさっと出したり出来るのは大事だからな。
・・・「せいっ」・・・「はぁっ」・・・「ふんぬずば!!」
パッと洞窟をみた感じだと、暗くはないな。松明はいるのかねぇ、どこぞの悪魔召喚ゲーみたいに、階層まるごとダークゾーンってのは、この国民的RPGには無かったと思うが、まあ用意しておくか。
「ふう、準備運動が終わりましたわ。マスターは宜しいんですの?」
「ああ、俺は大丈夫だ。とりあえず、エルザも何かあった時用に取り出しやすい場所に薬草を入れておけ」
エルザに薬草と毒消し草を2個づつ渡す。
「右が薬草で左が毒消し草だ、どっちも即効で効くから、やばかったら躊躇なく使えよたけぇもんでもねぇからな」
「わかりましたわ、さすがマスターですわ。さすマスですわ」
人を捕獲用の鉄棒みたいな言い方するのをやめろ。犯人確保!じゃねぇよ。
エルザが薬草を胸元に突っ込んでるのを見て別の事を考える事にした。あーっと、とりあえず撤退基準だけを決めるか。どんなもんなんだろうな、最終的には命が脅かされた時なんだろうな。あとは小さい所で長い事迷っちまった時、食料が尽きた時、モンスターが強すぎた時、やくそうだのの備品が切れた時だな。とりあえずこんなもんでいいだろう、今回は誰に急かされてるわけでもねぇし自己判断で早めに撤退ってくれぇの気持ちで行くか。
「エルザ、今回の方針は様子見だ。やべぇなって思ったら一度仕切り直すからな。余力持って進めていこうぜ」
「はい!備えあればウクレレ無しですね」
おうインストールした雑学どこ行った。ブーかよ、まるで無力なブーかよ。雑学インストールしたんじゃねぇのかよ。これは緊張を緩和する為にわざとか?まあいい。
とりあえずだ、わけのわからん前振りも終わったとこで、洞窟だかダンジョンだかに入るか。
「おう、憂いな。遠いぞ、言葉に距離がありすぎる。じゃあ行くぞ」
エルザと2人並んで階段を降りて地下へ進む。どこの誰が整備してるのか知らねぇが綺麗な階段だ、ここら辺の整備も不条理世界ことRPG世界の謎ってやつだな。綺麗な階段を作るのは意外と高度な算術がいるんだぜっと。まあもうどうでもいいっちゃーでどうでもいい。拘って考えてもドツボにハマるだけだしな、受け入れて行こう。
「結構明るいですわね」
「だな、こりゃ松明はいらねぇえな」
頭陀袋に松明をしまい込みつつ、階段を降りて地下一階であろう場所についた。
「とりあえず、ここからだな。何があるか分からねぇから慎重に行くぞ」
「はい、隊列はどうしましょう」
「ん、横並びでいい。今回は二人しかいねぇしな」
すすっとエルザが身を寄せて来る。ちけぇ並びすぎた。肘を曲げた手を伸ばして距離感はこれくらいだと伝えつつ周囲を見渡す。エルザは察したのか腕で示した距離を取って一緒に歩き出した。
こりゃ洞窟というより坑道に近い構造だな、採光も所々出来てるみたいで外の光が入ってくる。試練だのなんだといってから、もしかしたらある程度は管理ってーか危険が無いように保全された場所かもしれねぇな。
耳を澄ますと、遠くから獣の声だか鳴き声が聞こえる。まあモンスターとか居るよな巣穴みたいなもんだろうからな。
「ある程度、人の手が入ってるっぽいな。んでモンスターやらの鳴き声も聞こえるな」
「ですわね、もうちょっと可愛く鳴いて欲しいものですわ」
そこか、それはそれで倒しづらい気がするけどなぁ。とりあえずしばらく一本道っぽいので、周囲を警戒しつつ歩いていく。おもったより周囲の警戒ってのは消耗するな。
「来ましたわ」
ん?おお、敵か。索敵はえぇな。エルザの声から数秒後にモンスターが姿を現す。ちょっと肥えた吸血蝙蝠って感じかね。
「エルザ、空に浮き上がらねぇように牽制するから叩き落せ」
エルザへの簡単な指示をした後に、適当な石コロを掴んで洞窟の上部に何発も当てる。音と落ちて来る石の欠片で上空は危険だと思わせる。
投擲の動きから、こちらが脅威と思ったんだろう。上空へは上がらずに真っすぐこっちに飛んでくる。はい、おつかれさーん。
投擲してる間に右斜め前に陣取っていたエルザが大きく振りかぶった「おおかなづち」を振り下ろした。
叩き潰す程の勢いではなかったので、ゴキボシャと骨と内臓が潰れる音を出して蝙蝠は死んだ。初見だが、そんなに強い感じでもないな。
「おつかれ、この感じの敵なら。結構先まで進めそうじゃねぇか」
「そうですわね、初戦なので消耗しないようにと加減したのですが、あっさりでしたわ」
なげぇこと雑魚退治ばっかしてたから、ゲーム的には適正レベルを大幅に上回ってるって感じなのかねぇ。まあ慢心しねぇで進むか。
「そうか、手ごたえが軽いのはいい事だ。しばらくは消耗度合いを確認しながら進むか」
「はい、そうしましょう」
おっ、何時まにやら「はいですわ」みたいな不自然なお嬢様語が治ってるな。そうゆうのでいいんだよっと。
モンスターの気配をさぐりながら、洞窟を進む。道中に何度か蝙蝠やらスライムやらネズミに遭遇したが強敵と感じるほどではねぇな。ってかスライムってあちこちに居すぎだろってーの。
遠くから獣の鳴き声っぽいものが聞こえる中で、戦闘音が聞こえる。派手に動いてんなードタバタうるせぇ戦闘だ。 大立ち回りってやつですかね。
「マスター。戦闘音がしますね」
「だな、もしかするとサマルカンドの王子とやらかもしれん。面倒事にならないようにするぞ」
「はい、判断はお任せしますね」
音のする方に進んで行くと、蝙蝠2匹とスライム1匹相手にドタバタと戦闘している奴がいた。
あーありゃ王子だわ。全体的に緑だし、変なゴーグルも着けてるわ。
「苦戦してますわね」
「あーまあそりゃなぁ、オープンスペースで1対3とか負け確の位置取りだしな」
・・・どうすっかなこれ負けるだろアレ。盾で必死にさばいてるけど対空処理できてねぇ。
「あーーーもう、しゃあねぇ加勢すんぞ」
「はいっさすがですわ、義を見てせざるは勇なきなりですわね」
おいっやめろ、勇者ムーブしてぇわけじゃねぇ。そんで正解かよ普通に正しいかよ。
「おいっ緑色のやつ!加勢するぞ、下がれ」
王子?とやらに声をかけつつ、ヘイト寄せを兼ねて大きな声を出す。モンスター共が声に反応して止まった隙に戦線まで駆け込む。
「エルザ、スライムから頼む。俺は上にいるやつを落す」
「わかりましたわ!くらいなさーーい!ぺにょーーーるはんまーーー!!!」
エルザのわけわからん必殺技名を聞き流しながら、中空に居る蝙蝠に飛び上がって大剣を差し込む。差すだけなら飛んで手を伸ばせば5mくらいまでは届くからな。大剣ってのは伊達じゃねえ。
着地と同時に振り返って、高度が落ちた蝙蝠に向かって大剣を振り下ろす。ほいおわりってな。
エルザはどうだ?・・・・一撃か。
「マスターお願いします」
「あいよっっと」
初戦と同じように石コロをぶん投げて高度下げてやる。やるってーか殺るだわな。エルザのスマッシュが直撃して終了だ。
とりあえず状況終了ってか、さて緑のアレはどうなりましたかね。
あーうん、そうだなわ。
緑のアレはエルザに釘付けだ。そりゃなぁ大きな獲物もった美形の女性に助けられましたってやつだもんな。
「あーどこの誰だか知らんが割り込んですまんな。問題が無いなら俺たちは先に進むがいいか?」
「えっ?あっはい・・・」
おし、混乱と見蕩れしてる隙にさっさとずらかろう。それがいいそうしよう。
「じゃあな」「ごきげんよう」
緑のアレは、まだエルザに見蕩れてる。アホか常在戦場ってやつだダンジョンで気抜いてんじゃねえよっと。
一応勇者らしいから死んだらマズイだろうから加勢したが、なるほどダメな奴くさい。さすが棺桶王子ってとこですかねぇ。
そんな腑抜けだから容易に囲まれるんじゃねえーのかってね。
エルザに小声で「離れるぞ、道中のモンスターは手早く処理だ」と声をかけて、周囲を警戒しながら距離を取っていく。後方から何かをつぶやく声が聞こえるが聞こえねぇ。
序盤よりペースを上げて道中をさくさくと進み、舐めプのダンジョン攻略って感じで行き止まりを目視で確認したら道を変えて進んでいく。本来なら行き止まりは歩ききって抜け道とかを細かく確認したいんだが、まあこんな序盤に大した物も事もねぇだろうからいいろうだろう。しかも適正より大分こっちの強さが上っぽいしな。
ちなみに物って話だが宝箱っぽいのは全無視だ、前と同じで予期せぬ所で窃盗扱いされるのは嫌だからな。
急ぎで歩き大分距離も取れた所で、水場を見つけたので一旦休憩をとることにした。
「エルザ、ここいらで少し休憩としよう。水回りにモンスターが居ないかだけ確認してくれ、俺は軽い食事の用意をしておく」
「わかりましたわー、水場確保ー」
楽しそうだな。とりあえず、ここで一旦休憩だ。緑のアレ?仲間にする?そんなんは無ぇ。
THEやっかいごとの役満をテンパりすぎで却下でベタおりだ。
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