第21話 勇者出発!!・・したくなげぇ
遠くに聞こえる朝支度の音に気付いて目を覚ます。なんだかんだとまだ少し気を張ってるのかもな。音自体はすげぇうるせぇわけじゃねぇのに目が覚めちまった。
「あぁー久しぶり安定した場所で体を休めた気がするわ」
「マスターおはようございます。朝茶はその日の難逃れとも言いますよ、お茶をどうぞ」
俺より早めに起きてたらしいエルザがお茶を出しながら、挨拶をしてくる。コイツさっそく雑学出して来たな。効果覿面って素直に言っていいのか悩む事案だな。まあいいか。
「おう、ありがとな。とりあえず一杯もらうわ」
「はい、今日は洗礼の洞窟へ向かうのですよね?」
「ズズッ、んーそうだな。道具屋で宿屋協会がなんちゃらって言ってたから、朝食がてら宿屋の従業員から情報聞いてから行くとするか」
「はい、それでわ用意しますわね」
街歩き用の服を着ていたエルザが恥じらいも躊躇も無く、戦闘可能な服装に着替えている。俺はまだ少し覚め切らない頭でそれを見ながらお茶を啜ることにした。まあ眺めが良いって話だ。
程よく頭も覚醒しだした所で、着替えをして朝食を取りに食堂へと向かう。
まだ昨日の酒の匂いが少し残ってて食堂はアルコールくせぇ。酒は嫌いじゃないが油とアルコールの残り香ってのは、ちっと不快な匂いだな。とりあえずエルザと2人で空いてる席に腰かけて従業員を待つ。
「おはよーございます、朝食になさいますか」
「ああ、2人前頼むわ、あと手が空いたらでいいんだが宿屋協会で管理してる依頼って言うのか、その情報があったら教えてくれ。路銀を稼ぎてぇ」
「はーい、朝食二つですね。あと依頼の方は受付カウンターにお越しいただければご説明できます」
「あいよ、じゃあ飯食ったら。そっちに顔出すわ」
「おねがいしますー」
いわゆるバイトの娘なんかね?朝から元気だな。そのまま運ばれてくる食事を待って朝食とした。食事をしてるエルザはなんだか幸せそうでいい。モグモグモキュモキュとしながらにこやかに雑談を仕掛けてくる。今日は雑学が多めで為になるんだかならないんだかって感じだが。
「ブイヨンはカツオ出汁みたいなものですわ、味噌があって初めてコンソメと並びますのよ」
ってな具合だ。ブイヨンとコンソメの違いを教えて貰ったが残念ながら、もう味噌汁は飲めねぇだろうから無駄な雑学だと思うぞ。
そんな平和な食事も終わり受付カウンターに行くと女将なのか知らんが、40才前後の女性が居て話を聞いてくれた。
曰く、魔物退治はいつでも誰でもしていいこと。
素材に関しては宿屋でも引き取れるが道具屋でもかまわない事。
王子様の救出自体は試練ってこともあってまだ見合わせているらしいって事。
洞窟自体は、日帰りできる距離で誰も管理してないので自由に入っていい事。
こんな内容だった、これらを聞き出すまでに連れの女の子も危ない目にあわせるのかい?だの、どっから来たんだいだのと雑談が入りまくったが、まあ年頃の習性みたいなもんだろう。こっちを探る為に雑談風に情報収集してるって感じでもなかったしな。質問が核心をつかずに下世話が多いってやつだ。
ちなみに後で問題になると面倒くせぇから、女将に小銭を握らせて俺と話したことを忘れて貰った。
もちろん王子の殺害なんて考えちゃいねぇので、捜索隊が来てやれ情報教えろだのと言われるのが面で嫌だと素直に言ったら表面上は納得してくれた。まあ怪しい奴って記憶はされちまっただろが、最後の念押しで忘れろよと言って小銭を追加したから平気だろう。これでくだらねぇ事したら敵だな。
「さて、エルザ。用意はいいよな?」
「はい、まいりましょう」
なんつーか、メイド化してきたするけど、まあいいか。
エルザと2人で女将に聞いた方向へ向かって街を出る。道中はアリンコとスライムとおおねずみって所ですかね。倒した物が金になるって思うと先に進めないから極力避けて行く事にすっか。
「エルザ、洞窟に行くときに遭遇するモンスターは倒さなくていいぞ。素材持って歩くのは現実的にねぇ」
「そうですわね、ですが肩慣らしに洞窟近辺で少し戦ってもいいかしら?」
「ああ、それはかまわねぇ、素材は草だのに包んで土に埋めときゃいいだろうしな」
「はい!リスの宝物みたいなものですね」
それは、どこに隠したか忘れちまうって事じゃねーのかねぇエルザさん。
バカバカしい会話をしつつも、モンスターをさけて洞窟まで向かうが思ったよりもモンスターがいねぇ。あー王子様が試練に行くからって兵隊まわして掃討でもしたんかこりゃ。金物の靴跡が多数あるわ。
「エルザ、どうやら洞窟まではモンスターが駆逐されてるっぽいぞ。少しだけ気を緩めて体力温存しつつ進行すんぞ」
「はい!drive out monsterですわね」
「・・・なんで英語なんだよ」
英語は日本人からすると英語で言うとこうだよって雑学の範囲か?なのか?異世界とやらに来ちまったから、今後聞くことの無くなる言語だから複雑な気持ちになるじゃねぇか。
まあそんなこんなで、駆逐済で整備まではされていねぇが安全な道を歩いて洗礼の洞窟だっけか?試練の洞窟だったかに辿り着いた。
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