第19話 勇者到着!!・・・はがねのこころ

 ちぃとばっかしケツにダメージを食らいながら進んだ馬車での逃亡劇も終わって、俺たちはサマルカンドの城下町に到着した。

 

 国境の警備があるって話だったから、少しばっかり気を張り詰めていたが何事もなく通過出来た。丁稚が言うには、サマルカンドって国はちいせぇらしいが、先祖が勇者だのなんだので由緒あるって話らしい。まあ勇者だの魔王だのってのは勘弁だし、愛想よさげに「ほー、そりゃすげぇな」とだけ言っておいたが、心はへーふーほーんってな具合だわ。

 

 そんで、今は移動のパーティってぇか乗り合いは散開してエルザと二人でサマルカンドの城下町を歩いてるってとこだ。どうでもいいが、別れ際にエルザが馬のソクラテス夫妻号となにやらハムハムしあってた。ありゃ馬のコミュニケーションかね。おかげで服だの髪がびしょ濡れだったから拭く羽目になった。

 

 まあそんなこんなで隣国へついて自由行動再開だわ。結構移動したが、まだ用心しつつ行動だな。

 

 さて、この到着したサマルカンドとやらの街並みは、丁稚の言う通り小さくこじんまりとしてて、目立ったものも無い。建築様式もはじまりの街とそんなに変わりはなく、設備ってーか建造物もおおまかに道具屋、宿屋、教会、いくばくかの民家と偉そうな色した石畳の先にある城ってとこで見どころもねぇ。

 

 これだけこんじまりとしてると地域コミュニティが密ってそうだから注意が要りそうだな。

 

 「とりあえずだぁ、宿決めて今後の予定でもたてるかぁ」

 

 「はい、思ったより小さな街ですわね」

 

 「だなぁ、パッと見える宿屋。もしかしたらあそこしか泊まるとこがねぇかもしれねぇな、まあ平地続きで河川だの海だの山だの資源ってのが無い街なんてこんなもんかもな」

 

 「なんだか暮らしづらそうですわ」

 

 エルザとふたりで、どうでもいい考察をしながら宿屋へと入っていった。

 

 宿屋は街並みに一軒しか見えなかっただけあって、結構な大きさで食事処まで付いてる。こりゃ夜は酒場になるって感じの宿屋かね。まあそうなら少しくれぇは情報が集まってるかもしれねぇな。

 

 「いらっしゃい、旅の人かい?」

 

 「ああ、そんなとこだ。部屋は空いてるかい?」

 

 「おう、空いてるよ。追加で代金払うなら食事もつけられるがどうする?」

 

 「んじゃ、朝と晩の食事を頼むわ、それと旅の汚れを落としてぇからお湯と布切れをくれねぇか」

 

 「あいよ、じゃあ用意するから待ってな」

 

 宿屋の親父がお湯を用意してる間に、女将らしき人に宿の説明を受けて3日分の宿泊料と食事代と湯の代金を払って部屋へと移動した。

 

 案内された部屋について、とりあえず一息つきますかね。ケツもまだ少し痛てぇしな。

 

 「っと、とりあえず長旅と御者おつかれさん」

 

 「旅慣れた馬でしたので楽でしたわ」

 

 「そっか、まあ、ありがとよ」

 

 「はい!どうしたしましてですわ」

 

 相変わらずの謎いお嬢様言語を操ってるエルザに労いと感謝を述べつつ旅装を解いていく。

 

 「とりあえず、旅の汚れを落とすか。エルザ先につかっていいぞ」

 

 「順番で使うと湯が冷めてしまいますわ、一緒に汚れを落としましょう」

 

 気を使ったものの、まあそうだよな。

 

 「ん、そっか。そだな」

 

 「マスターは私の隅々まで知ってますし今更ですわ」

 

 まあ、そうなんだが言い方。普通に生きて恋愛してりゃ女と風呂入るなんてザラにあることだし、いちいち騒ぎ立てるのもめんどくせぇしな。

 

 とりあえず、お互いに上半身だけ裸になって前面は自分で拭き、背中をお互いに拭いた。下半身に関しては、脱いで棒立ち状態になったのを木を磨くみてぇに拭いて綺麗にして終わりって感じだ。

 

 ん?感想か?白くてきめ細かくて手が肌にピタッってくっつく感じだな。もち肌っていうんだっけかあれだあれだ。

 

 「すっきりしましたわ」

 

 御者してた分、エルザの被ってた砂埃がひどかったな。今度は交代できるようにしつつ、衣類も考えておくかね。ちゃんとした旅装ってのもいるのかもしれんな。しかし、やっぱ御者してんと砂被るな、今後は交代できるように俺も覚えるか。

 

 

 「だな、さて宿も確保して汚れも落としたし少し街を歩いてみるか」

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