第16話 エルザ地震!!・・・くえいく

 さて、今日からしばらくは日銭暮らしだな。エルザと2人で宿の朝食を取りながら、今日の予定を話し会う。

 

 ちなみに髪の毛は昨晩に染め終わっているが、フード自体は外していない。

 

 いくらフードを被っていても、黒髪が金色に変わって居たら違和感があると思うしな。フードの中身を直接覗かれた事はねぇが、なにかの瞬間に見えたりしたことはあったろうし、誰がどこで気付くかわかんねぇ。少なくとも街の中では数日はフードを被った状態にしておいたほうが安全だろう。

 

 「マスター、んぐ、今日は、んぐ、何を、んんぐ、しますか?」

 

 「食いながら話すなって―の。んー今日からは、しばらく近辺でレベル上げってーかモンスター退治だな。すこしばっかり貯蓄も欲しいしな」

 

 「んぐんぐ・・・。はい、わかりましたわ!新武器ですわよね!」

 

 「おぅ、そうだ。武器のテストも兼ねて街周辺ってとこだな、昨日まわった道具屋に売るつける段取りもしたしな」

 

 モンスターの素材とかの売却に関しては、昨日髪染めを探して道具屋を数件梯子してる最中に、一軒の道具屋と交渉して売り先として話をつけた。素材売却で大事な条件は酒場のダルーイだっけか?あいつらに目を付けられねぇって所だから、そこら辺を分かってくれる売り先を見つけられったのてのは、地味にデカい。

 

 入手先は口外しない、こっちを詮索しないって条件なだけなんだが、ふっかけて来た店があったのはなかなかテンプレ異世界だったな。

 

 「んぐぐっ。・・・街の近くが平和になるのはいいことですわ」

 

 「まあ、だな。知らん奴らばっかりだが目覚めは良くねぇからな」

 

 ・・・

 ・・

 ・

 

 宿での食事を終えて、昨日の武器道具屋連中と宿の従業員にチラッと聞いた魔物の多い方の門に向かう。

 

 「エルザ、胃は落ち着いたか?」

 

 「はい、朝食もいただいて絶好調ですわ!」

 

 「よしよし、それならいい。門を出たら、まずは人気の少ない場所に行くぞ、そんで少し武器の様子をみてから実戦でいいな?」

 

 「はい!連れ込まれるのですね!!そして敵お尻、己の尻は百戦危うからずですわ!」

 

 なんつーか朝からぶっ飛ばしてるな。なんだ・・・今時おっさんリーマンでもそんなゲスイジョークいわんぞ。ハイテンションすぎてついていけねぇ。

 

 「だいたい合ってるが尻じゃねぇ。知識の方だknowledgeだ」

 

 「そうなんですの?ノンジャンルで更新したデータにありましたわよ?」

 

 やべぇなノンジャンル。おやじギャグという表現すらも古いのにその実データを持ってるとは、高次元なんちゃら遊びすぎだろ。

 

 ・・・結論的にはエルザのチートはぶっ壊れだろ。

 

 毎晩データダウンロードで知識入れれます。ただし致命的じゃないミスが多数あるおふざけデータですって、弄ばれてる感すげぇ。

 

 ぶっ壊れチートは異世界転生だの転移には必須だけどよ、マジで壊れてるのはなくねぇか。まあ何もねぇよりいいけどよ。いいんだけどよ。

 

 「すげぇな高次元なんちゃらってのはよ・・・」

 

 「ですわ!生まれて間もないワタクシも安心ですわ!!」

 

 そのまま二人で歩いて門に着く。こっちの門番は少しばかり強そうだ。「旅人か?」「モンスターが出るから気をつけろ」と二言三言声をかけられたが、無難で最低限の応答だけを返しておいた。

 

 まあ見ない顔だから慎重に対応したのだろう。とりあえず門番はどうでもいいのでエルザと2人で門を出た。すこし離れた場所に林が見えたのでそちらに向かう。

 

 「あっちにある林で、少し武器の使い勝手を確認してからモンスター退治だな」

 

 「はい!シミュレーションは完璧ですわ!!」

 

 またヘンテコな技考えてんだろうな。

 

 「おー、無理の無いようにな。まあしばらくは自由に武器の塩梅でもみてくれや」

 

 あんまり無理して一撃確殺だけを狙われても困る。俺たちは大物の武器を持ってるから、継戦能力を失いがちだしな。デカい武器振り回して外してピンチだの疲れちまって窮地だのはやべぇからな。

 

 とりあえず、エルザの事はエルザに任せて、俺も武器を体に馴染ませる為に上下左右と斜めからの振りを確かめる。とりあえずは振れる・・・なっと。

 

 こいつは大剣だから、おそらく刺したり斬ったりを意識するより、全力で叩きつける、ぶん回すのがいいんだろう。そこらを切り札にしておくか。

 

 しばらく武器の振り具合を確認して、大分馴染んだところでエルザに声をかけた。

 

 「どうだ?そいつは使えそうか?」

 

 「なんとかなりそうですわ」

 

 自分の武器を確認してる最中にチラッとは見たが、なんていうか叩き潰すような振りが多かったな。まあ本人が大丈夫ってんだからいいだろ。後はモンスター倒しながら追々慣れていくしかねぇ。

 

 「よし、そんじゃあ練習はこれ位にして、ちっとばかしモンスターを狩ってくか、今日の飯代くらいは稼がねぇとな」」

 

 「はい!」

 

 林から街道沿いに戻り、近隣を見渡しながら移動する。モンスターは街からちょっと離れねぇとダメだろうな。ある程度街側でも駆除してんだろうしな。

 

 そんな事を考えながら歩いてると、スライムの色違い数匹と遭遇した。

 

 「エルザ右側よろしく」

 

 「はい!おまかせあれーー!」

 

 勘定系の奉行かよ。まあいいけどよ。

 

 エルザは「おおかなづち」を引きずるように走り込んで、会敵の直前で小さくジャンプして弓なりの姿勢をとってから思い切り叩きつけた。

 

 「おーっほっほっほ!爽快ですわ!!」

 

 はい、どうみても。オーバーキルです。ありがとうございます。

 

 ドッパーと派手な音を立ててるバーサーカーお嬢様を右前方の視界に収めながら、色違いスライムの体高にあわせるように大剣を横なぎに振り回す。まあ真っ二つだな。ゼリー状ってのは斬りにくいかと思ったらそうでもねぇってことか。皮が斬れたら中身はやわらかいのかもしれん。

 

 そのまま、どんどん街から離れてモンスター退治を続けた。見た事ねぇ敵もいたが街周辺って事もあって弱かった。ダイジェスト的にはこんな感じだ。

 

 対おおきななめくじ。おおかなづちに叩き潰されてネチョォ。

 

 対おおきなこうもり。エルザからぶりで俺が大剣で斜めに斬ってボトッ。

 

 対こんぼうをもった小人。こんぼうと「おおかなづち」の打ち合いで相手のこんぼうが粉砕された勢いのままドゴォ。

 

 武器鳴らしと日銭程度のモンスター狩りも安定してきたってところで、あたりが暗くなりつつあったので街へ戻ることにしとく、たぶんだが夜には専用のモンスターが出て、そいつらは昼間のよりモンスター強ええと思うんだわ。

 

 帰りしなにエルザに武器やモンスターの手ごたえを確認しておくとするか。

 

 「新しい武器はどうだ?」

 

 「そうですわね、こんぼうと比べると当てる場所が決まってしまうのが難点ですわ」

 

 「あーまあ、そうか。重かったり扱いづらいのはねぇか?」

 

 こんな装備してるが、一応命かけて戦ってるからな。あわねぇなら買い替えだ。

 

 「大丈夫ですわ!最後の方は大分慣れてきましたし、いけますわ!!」

 

 「そっか、ならいいが無理だけはするなよ」

 

 「はい!マスターは平気でしたの?」

 

 「ああ、俺の方はなんとかなりそうだ。剣から大剣だしな」

 

 「ふーん、私も棍棒から大きなハンマーで変わりませんのに。マスターは心配性ですわね」

 

 まあ、そうかもしれんな。こいつ戦闘データもダウンロードできるくせぇしな。こと戦闘に関しては任してもいいのかもな。

 

 ただ叫ぶ癖だけやめてほしいがな。あれは敵を呼ぶってーのに「掛け声の無い必殺技なんて、ただの卑怯な技ですわ!」とかいいやがるからな。

 

 「まあ、少しだけ慎重派なのかもしれねぇな。俺にはお前しかいねぇしな」

 

 「やだ照れてしまいますわ!おほほほ」

 

 まあ、そんなくだらねえぇやりとりをしながら街へと戻った。

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