第13話 エルザ発奮!!・・・ぼくはさんぷん
日の落ちる速度を意識しながら移動していたのもあって、俺とエルザは空が完全に暗くなる前に次の街に着いた。
街を囲う石積みの防壁をアーチ状にくり抜いた入口を抜けて街に入ってみる、まあ大き目な街だな。酒場の行商人達の話では、この街が近辺で一番でかいってことだったはず、あいつらが嘘をついてなければ。
「ずいぶん大きな町ですわね!」
「ああ、そうだな。今まで居たのは、あくまで最初の街ってことだ」
「最初の街は悪魔なんですの?」
あたらずしも遠からずって間違い方だな。まったくクソな街だった。まあいい、次の段取りだな。
「そうだな、ありゃ魔物の巣ってやつだ」
「そうでしたのね、全然気が付きませんでしたわ!殲滅しませんの?」
「いや、殲滅はいい。頼まれてねぇしな。もうどうでもいいさ。んで、少し早いが移動疲れもあるし、今日は宿に泊まって休んじまうか。それから飯でも食いながら明日の予定を決めていこうぜ」
「そうなんですのね・・・わかりましたわ!とりあえずは宿さがしですわね」
門をから出て、人の流れを遮らないように左右の見ながら歩く。まだ夜にはなりきっていねぇが、夜用の屋台なんだろう手牽き式のキッチンカーみたいなのがチラホラ営業してる。
街は遅い時間でも活気があるみてぇだ。
それにまだ街の店舗自体はやってるみたいなので、駆け足で服屋を探す。
「エルザ、すまん前言撤回だ。服屋を探している、みっけたら教えてくれ」
「わかりましたわっ、装いは科学で女の武器ですわ!!」
街の大きな通り沿いにある店を一軒づつ確認していくと、あった。ってこりゃ防具屋か?ああ、まあそうか、ごっちゃとはいえRPGだったな。で、そいつはなんだどっかのハイブランドの姉さんの名言だっけか。マジでどっから知識持って来てんだよ。何を知ってて何を知らないんだ?・・・とりあえずその疑問は後回しだ。服を探して現地人に溶け込もう。
「すまん、防具屋ってカテゴリだったわ。あそこにある、行くぞ」
「はい!さすがメガ早いですわね!!」
Mega早いのか目が早いのか、どっちかわかんねぇイントネーションやめろや気になるじゃねぇか。
防具屋に入ると、そこには「ぬののふく」が多用なデザインで存在してあった。他にある「たびびとふく」「かわよろい」「てつのよろい」は、どいつも似たデザインで作られてた。街の人の服は「ぬのふく」ってことかね。それを数種類かっておくか。あとは戦闘用だが、それはまた後でだな。
「エルザ、店員さんと相談して、そこにある「ぬののふく」から好きなのを5セット買ってくれ。俺も自分のやつを5つ程選ぶわ」
「わかりま・・・せんわ!マスターの服は私が選びますわ!!」
「おっおう?どした勢いあるな」
「だって楽しそうですもの!殿方に自分が選んだ服を着てもらえるんですのよ?当然ですわ!!」
こりゃ、女性の本能的なアレか?踏み込まねぇで好きに気分よくさせたほうがいいな。
「じゃあ、すまんがエルザの好みで見繕ってくれるか?ただこれから宿も取るから、ほどほどでな」
「はい!ですわ!!!」
・・・おい、俺の前で屈んでズボンの丈チェックをするな。三次元双曲線が目に入る。もうウキウキで手が付けれんな。楽しそうだしな、まあ巻き込んだわけだし、これくらい甘受しとくかねぇ。
・・・
・・
・
ってな具合で、エルザに堪能していただいた時間も終わってだな、今は二人で宿探しだ。
あたりを見回しながら宿屋を探していると、大きな通りの右手に宿屋が見えた。外見も小奇麗にしているし。あそこでいいんじゃねぇか。
「エルザ、なんか目ぼしいと宿屋あったか?なけりゃ、あそこにしねぇか?」
「うーん、なにがなんの店か分かりませんわ!!」
はよ言えや。まあ看板がメインで文字がねぇもんな。識字率低いとかなんだろ。宿屋に台帳あるくせにな、あっ代筆か。代筆業ってのあったなそういや。
「まっそうだな、そこらへんもボチボチ教えていくわ」
「はい!お願いいたします!」
おーおー、元気なこって。エルザの元気な声に興味を惹かれた何人かが目線をよこしたが、エルザの顔や体にイヤらしい目線がうつったので、そちらに向かって無言で歩き追い払った。ビビるんなら絡むんじゃねぇよ。
宿はありふれた木造の宿で、店の中は夕食時なのだろう。出来立ての食事の良い匂いがしていた。
「いらっしゃいませ、お食事ですか?お泊りですか?」
おそらく店の手伝いだろう、10才くれぇの小さな女の子が出迎えてくれた。
「泊まりでお願いしたいんだが2名2部屋、空いてるか?」
「えっとー、あれ?少々お待ちくださいね」
空き部屋状況を覚えて無かったのか、宿の受付台帳みてぇなもんを出して確認をはじめた。
「んー、あれ?ないなぁ。どうしょ」
宿の娘が困惑してると、食事の給仕をしていたであろう母親らしき人がやってきた。
「なにかあったのかい?お客様がお待ちじゃない」
「二人で二部屋って言うから、空いてるお部屋を確認してたんだよ」
「ああっそういうことね」
なにやら納得した女将さんだかお母さんは、こちらに向き直って話し始めた。
「今日空いてるのは、3人部屋だけだねぇ。最近は勇者様が近くの街に来たらしくて、見学を兼ねてこの街に来てる人が沢山いてねぇ・・・」
ちっ、ここいらにも魔の手が伸びつつあんな。
「なるほどな、そんなすげぇ話しなら仕方ねぇ。他の宿もそんなだろうな。ちょっと待ってくれ」
「エルザ、今日は俺と一緒の部屋に泊まるがいいか?宿に空きがないらしい」
「マスター、いつも同じ部屋にしましょう!と言っていますわ!もちのロンでそうしますわ!!」
ほんと、古いな。それ昭和の初期生まれしか使わねぇと思うぞ。
「わかった、すまんなプライバシーは配慮するようにするぞ」
「かまいませんわ!どんとこいですわ!!」
プライバシーの配慮を気にするなって事か、まあそのなんだ・・・体のつくりや下着の色形まで拘って作ったもんな。今更見られてもってやつなんかね。まっそれを記憶してればなんだがな。
「待たせちまったな、ってわけで3人部屋を頼むわ。あと部屋に入る前に旅の汚れを落としたいんだが水場はあるか?」
「はいよぅ、3人部屋だね。そこの裏手の道をつきあたった奥の部屋だよ、旅の汚れは裏手にある馬車止めの近くに井戸があるから、それですましておくれ。それとは別にお風呂に入りたいなら街の共同浴場にいっとくれよ」
「あいよ、わかった。んじゃ3泊分な代金は・・・」
その後、宿泊代金を払って宿の簡単な決まり事の説明を受けた。朝夜の食事は追加料金だとか、体を拭くのにお湯を別料金で盥に入れて持って来てくれるとかの細けぇ話だな。
「よし、エルザとりあえず。宿は確保できたから旅の埃落としを裏手の井戸を借りてやっちまおう、それから部屋に一度行ってから食事だ」
「はい!わかりましたわ!ちょっとべちょべちょが付いてますものね」
ああっ灯台にあった水場は塩っけが強いだろうから、しっかりとは洗わなかったからな。
大方の汚れを落として宿に戻って、受付にいたお嬢ちゃんから鍵と盥に入った湯を受け取って部屋に向かう。鍵を使って室内に入ると意外と広い、2LDK分くらいはあるって感じだ。キッチンとバスルーム、そしてトイレが各部屋に無いので、イメージする2LDKよりは広く感じるってとこだな。
ここらで、街に溶け込むようにしていきますかね。
「エルザ、これがこの世界の服だ。今後、勇者などと言われんように着替えてくれるか?」
「はい、わかりましたわ!」
「その前に、体を洗う湯だ。これで洗ってくれ、おれは一度部屋から出るぞ?」
「マスター!今更ですわ!!気になさらずに居てくださいませ」
んあ、いやだめだろ?いやいいのか・・・いいか。毎日このやりとりもめんどくせぇし。
「わかった。とりあえず俺も湯を使うがエルザから先に使っとけ」
「はい!レディーバーストですね!!」
ファーストどこ行ったよ。心遣いとか毒見とか盾とかよ。んでバーストすんのはこっちだよ。今なら頭がふっとうしちゃうよおとか言えんぞこら。
そんなこちらの様子をまったく考えずにエルザを服を脱ぎ、盥についていたタオルみたいな布で体を拭いていく。まあ凝視するもんじゃねぇし、俺は俺で荷物を整理しておきますかね。
「マスター!背中と髪をお願いします!!」
なんだよ、兄妹かよ笑。まあいいけどよぉ。別に女に慣れてねえわけじゃねぇし。しっかしほんとに俺の理想の体だなぁ。こだわっただけあるわ。シミひとつない、前方や横に不格好に曲がっても居ない背骨に、細いウエストラインを強調させるような腰骨、両脇のすきまから見える双丘は仰角を堅持している。ここまで完璧だと余計な事考えることもねぇってもんだ。
「へいへい、まだ湯が綺麗だな。髪洗っちまうか。汗もかいたし潮風も受けたもんな」
「はい、キシキシですわ」
結構なげぇな、洗いづれぇ。んー体は拭いたんだよな。
「よし、髪をあらうのにエルザは仰向けでベッドに横になってくれ。そう、ベッドの横に仰向けに寝転がって頭だけ出してくれ、そうもうちょい上だ。よし」
裸のままベッドに横向きになったエルザに毛布をかけてやって、横合いに出てる首の下に盥を移動して、ゆっくりと丁寧に洗っていく。なんだか昔にこんなことした記憶があんなぁ。もう思い出せねぇけど。
「ふぁあああ、気持ちいいですわ!マスターは頭皮上手ですわ!!」
逃げるのがうめぇみてぇな言い草やめろ。人聞きの悪い。
「バカな事言ってんな。ほれ一旦流すぞ、あとはこれで洗って終わりだ」
盥に付属していた、なぞの洗剤であらう。ちょっと手で水溶きしたら泡だったので、なんらかの界面活性作用の汁なんだろ。とりあえずつかっとけ。宿で出してんだから実績もあるだろ。
「助かりましたわ!人にしてもらうのって気持ちいのですわね」
意味深な事を言うな、後服をさっさと着ろ。エルザの風呂ならぬ盥は、終わりって事で俺の番だな。
「風邪ひく前に、きちんと体拭いて買ってきた服に着替えろよ」
「わかりましたわ。お手伝い感謝いたしますわ、ありがとうございました」
全然かんけぇねぇけど、乳白色のスープに小さい梅干しを乗せたラーメンを思い出したわ。結構好きだったな。さて、チンタラしてねぇで俺もささっと流しますかね。
「マスター背中を流しますわ!流しっこですわ!!」
「流しっこじゃすでにねぇけどな。まあいいか、頼むわ」
・・・野郎の清拭の描写なんてどうもでいいので、これ以降は省くとしてお互いに現地民の格好にこれでなったわけだ。
ちなみにエルザの下着の下は前世界のやつだった。貴重なものだと思うので、エルザに洗い方を教えつつ、丁寧に手洗いしておいた。決してよこしまな思いじゃねぇぞ。
んで、その後は宿で食事をとって「かけがえない時をエルザと過ごした」って感じですかね。
・・・すまん、嘘だ。
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