第8話 エルザ賢察!!・・・まじふぁいん

 翌日になった。今はエルザと朝食を取りながら今日の予定を確認している所だ。

 

 「エルザ、今日の体調はどうだ?」

 

 「はい、問題ありませんわ!!」

 

 俺が毎回、今日の体調を訪ねるのは出自がどうあれ、エルザは女性だからだ。月に5日程度、体調に変化が出る。独特の血の匂いが体から出るので、その時は肉食系や鼻の効くやつが居る相手とは戦いたくないからな。エルザものその意図をわかってくれて簡単に返事をしてくれるので助かる。

 

 「でだ、今日は昨日酒場で集めた情報を元に、小島へ通じる近道、そして可能なら小島にあるモンスターの巣とやらを調査しようと思うんだがいいか?」

 

 「はい、魔物の巣に繋がっているんですわよね。塞いでしまえばいいのですわ?」

 

 「まあ、そりゃそうだな。地下道ってのは小島に行くのに大事な通路らしいぞ」

 

 海の幸を小島で取って、モンスターに見つからないように地下道で運搬していたらしい。今は占拠されてしまって漁民が難儀してるって酒臭い息で嘆かれた。漁民なのに夜に寝ないで酒飲んでるって事はまあ漁業は壊滅してんだろうな。

 

 「まあ、そうなんですの?海から行けばいいですのに」

 

 船だと渡れねーだろう、きっと銛もった半魚人が襲ってくるわ世界観的に。

 

 「だな、まあ見てから決めようぜ」

 

 調査ねぇ。斥候的な職業、いわゆる情報整理係がいるよな。純戦闘だけじゃ成り立たねぇ。エルザみたいな特殊な人間が居るから2人PT限定な、なんて言ってられねぇな。死んだら意味がねぇ。まあ元デジタルデータの生まれたての人ですなんて言っても伝わらねえだろうし。少し特殊な生まれ位でいいだろう口調も貴族っぽいしな。

 

 よし仲間も雇っていくか。来て直ぐの頃に、場所だけは見て知ってるしな。モンスターも今後は他種族混合が団体さんで襲ってくる事も増えるだろうし、俺たちは物理攻撃2人しかいねぇから厳しくなる。回復や補助、そして魔法か遠距離攻撃が欲しい。

 

 「なあ、エルザ」

 

 「ふふぁい、なんですの?」

 

 「今日は下手をすると大量のモンスターに囲まれるかもしれん、それでだ酒場で傭兵っつーか、一時的な仲間を雇って体制を整えて行こうと思うんだが、仲間を入れてかまわねえか?」

 

 「いいですわよ!なまかは大事だって眉毛が繋がってる人が言ってましたわ!!」

 

 そいつぁ、いいやセーフでいいや。マヨ吸ってる時がピークだからいいや。

 

 「んじゃあ、飯くったら酒場に行って仲間集めていきますか」

 

 ・・・・

 ・・

 ・

 

 昼の酒場ってのは随分静かだな。銀行だの仲間の出し入れだの書類処理が多いからかねぇ。

 

 「あそこだ。エルザあそこで仲間の追加が出来るらしい」

 

 ダルーイの酒場って書かれた看板をぶらさげた一角は、宿屋の中でも戦闘で飯を食ってる連中が屯すってか、一般客と隔離されてる酒場だ。

 

 あの赤いバンダナのねえちゃんの酒場とは建物が同じだが、別の用途の酒場ってかんだな、ファミレスと競輪場の屋台にカウンター席って感じ位、違うもんだわな。

 

 「マスター!受付?の女性は寝ているようですわっ」

 

 「まあ店名通りなんだろ、だるーいってな。この街は組織のトップから戦う意思ねぇからな」

 

 そういうえば、街長関連のやつらは情報すら持ってこなかったな。こりゃ闇討ちまであるな。戻ったら先手でしかけておくか。

 

 どうせ平和は自分たちの手柄だって思い込んでるだろうし、近隣に言いふらしてるだろうからな。下手すると街で飼殺される勇者ってのもアリアリだな。なんちゃら意識体の楽しいと俺の楽しいは、これで全然別物だってのがわかったわ。

 

 移転後の安定を考えて、常識の差違に目をつぶって、目の前にぶら下げられた最低限やるべき事をやるようにしていたが、これからはもうちょっと考えて慎重にやっていくか。世界にローカライズして生きて行かんとな。どうせ過去にはもどれねぇ。エルザを01にしたくねぇ。

 

 っとっと・・・寝こけてる人が起きねぇから暇すぎて、明後日の事考えたわ。まあ起こすか、雇用や貸し借り方法の仕組みと代金しりてぇわ。

 

 「おーい、おねえさーん」

 

 「・・・Zzz・・うぅん・・・ZZZzz」

 

 声をかけたくらいじゃ起きねぇか、触ったらセクハラだろうしな。


 「おい、エルザわりぃがその女の肩をゆすって起こしてやれ」

 

  ゆさゆさゆさー ゆさゆさゆさー

 「おばさま?おばさま?仕事中に何で眠っているのですの?」

 

 「だれがおばんじゃい!!!」

 

 「あなたですね。ここは仲間を募集できる酒場と聞いたのですが?」

 

 正確なストレートパンチだな。まあ、全体的に年齢に低いこの世界ではセクシー系はそうじて熟と見なされまちまうわな。乙。

 

 「あああん?あなた?って勇者様じゃない、ようやくお供を決めてくれる気になったのかい?」

 

 ん-ー?なんの話だぁ?お供?きびだんごとかモンスター玉とか要る系か?

 

 なんてな、これユーザメイドのキャラ作る所やろ。現実だと、まあ育った人を選ぶって感じかね。

 

 「そんな話はしらねぇぞ」

 

 「あらぁ?街長から使いが出ていると思うんだけど」

 

 「来てねぇな、アイツらは毎日、偉そうにあっちの敵を倒せとかしか言わなかったぞ」

 「わたくしは体つきをいやらしい目でみられましたわ。ネチョネチョアイズですわ。」

 

 ひどい補足情報だな、おい。まあ美形にしたからな。ネチョネチョアイズドラゴンを召喚だ。そいつは即墓地に行きってとこか。

 

 「すまんな、不快だったよな」

 「問題ありませんわ、見るだけしか出来ない!もっとも憐れな男性ですわね。おーっほっほほ!!」

 

 おっ久々のおーっほっほほだわ。なにげに徐々にポンコツが治ってる気がするわ。

 

 直接的な不埒や破廉恥されてないなら、まだ許しとくか。対策はそのうち考えよう。

 

 ふたりでクソをクソと話してると。しばらく青い画面にFATAL EROOR出したような顔つきをしてたダルーイ酒場の受付のお姉さんが再起動してきた。

 

 「あちゃー、なによそれ」

 

 「なによそれ、って言われれば現実だな。俺の知った事じゃねぇ」

 

 「ふぅ・・・何がどうなってるのかしら。とりあえず一応の説明するわね。世界各国からの補助と一緒に、道具、武器、銀行、酒場、宿屋の各組合から勇者様への補助が実施されているわ。経済関係で困って魔王討伐が頓挫しないようにね」

 

 「はぁ、でも「50G」と「ひのきの棒」しかもらってねぇぞ?」

 

 「どうして??・・・各国と各組合いから集まったお金は15億Gは超えたと聞いたわよ」

 

 「はぁ、あの様子だと王様と街長あたりが着服したんじゃねぇの、王様は真新しくて豪華な衣装を着てたし、城の内装は派手だったしなぁ」

 

 「なんてことを・・・」

 

 わなわな震える人を初めて見た気がするわ。受付の女性は、わなわなしてもプルプルしない系だったな。まあどうでもいいんだけどな。

 

 「まあ、そんなのはどうでもいいから。ここで仲間を借りれるんだろ?借り方教えてくれよ」

 

 「ん・・んぅ。ちょっと待ってね。私はやることが出来たから、教えるのは他の子に任すわ。大丈夫優秀だから」

 

 しばらく待っていると、優秀な出来る子とやらがやってきて、仲間について教えてくれた。曰く、世界中から集まった義勇兵のようなもので、最後までお供すれば勇者のパーティということで地位も名誉も意のままにって事で、勇者が滞在するであろう、この街だったり。通るであろう大きな町の酒場に、沢山の力と技自慢が集まって、勇者のお眼鏡にかかる時を待ってるらしい。

 

 まあ、押しかけて来てくるPT希望者を組織的に整理してるのダルーイの酒場としての役目らしい。まあダルーイ仕事だわな。マッチョからの勘違いからの訳アリみたいのなのの群れだろう。それ。

 

 「説明ありがとな、概要は理解した。別に強制でも必須でもねえんだな。戦闘や攻略に、短期的に幅が出来るもんだと思っていいか?」

 

 「はい、それで大丈夫です」

 

 「でだ、利用料金はどうなっている?」

 

 「義勇兵への討伐報酬の分配ですね。ただし魔王だけは分配対象外です。ここダルーイの酒場に関しては、勇者様専用の組織となりますので、各国等からの義援金で運営出来ています。魔王に関しては各国の意見が統一されてません」

 

 「ふーん、そっかわかったよ。分配の割合は決まってんのか?」

 

 「特には決まってません、その都度話し会う事になっています」

 

 ずいぶん練り込まれた組織だな。運用を想定されてやがる。こりゃぁタヌキ王とかキツネ街長とかは、やべぇんじゃねぇかな。知らんけどな。

 

 さて、俺は今から利用しようと思うのだが、エルザの意見も聞きてぇ。ってエルザがいねぇ。どこだ。キョロキョロしていると「お連れ様なら、後ろです」と優秀受付ガールに言われた。

 

 ちと振り返ると、エルザは女性の義勇兵数人とお茶会をしていた。

 

 「やっぱり戦闘が終わると髪の毛が傷つきますわね」

 

 「そうなのよねぇ。極力束ねて魔物の体液や斬られたりしないようにしておくんだけど、それも絶対じゃないんだよね」

 

 「男どもは野営の時に襲って来ようとしたりするしさ、おちおち水浴びも出来ないよ」

 

 「そうなのですわね、うちのマスターはその点紳士的ですわ!」

 

 「「「いいなぁ」」」

 

 盛り上がってんな、ふぅ・・・仲良くなったら、決めづらいだろうよ。まあちゃっちゃっとして欲しいし、水を振るか。※1

 

 「エルザ、楽しそうだな」

 

 「マスター!いまこの方々と冒険の情報を交換してましたのよ」

 

 「うんうん、それでな。エルザと気が合うってのが前提で、回復が出来る奴と魔法が出来る奴の2人を仲間にしたいんだわ」

 

 「わかりましたわ、回復が出来る方と魔法で攻撃できる方ですわね?」

 

 「おうっ、ってか。俺じゃ女性的な部分での問題とかをわかってやれねぇ事があるしな、任せてもいいか?」

 

 「はいっ任されましたわ!!」

 

 「じゃあ、検討する時間はお昼前までな。昼を食いながら新しい人と打合せをしよう」

 

 だいたい3時間くらいかるから、全員と話せんだろう。ってことでこっちはこっちで仲間面談開始だな。

 

 「詳細はこれから相談するが、やることは近隣のモンスターの巣を破壊することだ。戦闘職1名と索敵と荷物運搬係を1名募集するぞ。我こそはと思うものは、酒場に迷惑かけねぇように面接を受けてくれ」

 

 「「「「おす!!」」」「「「「「はい」」」」「「「おおーーー」」」

 

 ん、爆音での返事ではあるがいいか、さて個別に聞きますか。

 

 「ホウライから来たサムライでござる。戦闘を希望する。特技は鳳龍・・・・」

 

 却下。格好良すぎるからダメだ。迷宮に居てください。そっちのがいい。

 

 「カマリはゼドガガ山からやってきた。戦うカマリの使命。ユウ・・・・」

 

 却下。ツノ生やしてから来なさい。臭い息とか使いませんし。

 

 「パトラン王国から来た戦士。王宮兵士なので戦闘は得意だ。ライ・・・・」

 

 却下。戦場でピンクは目立つからダメ。あとパトランは上乗せ50しかない時あるからダメ。

 

 なかなかいないな。まあこれだけ人いりゃな色々な人も居るわな。まあ気長にやりますかね。

 ・・・

 ・・

 ・

 それから数時間かけて全員を面談し最終的に決まったのは、このメンバーだ。

 

 俺は荷物持ち係として商人の「トルシエ」って男性一人選んだ。エルザの方は回復係として僧侶の「フラーレ」と索敵と道中の仕掛け解除に「ウェンディ」をメンバーに選んだらしい。

 

 なかなかバランスがいいんじゃねぇか?まあ何事もやってみねぇとわかんねぇけどな。

 

 人も決まった所で暫定的に一緒に行動する5名で昼食をとりつつ、改めて出来る事なんかを確認した。

 まとめると、こうらしいトルシエは「ふしぎなふくろ」なる物を持っていて、荷物がほぼ無限に持てるらしい。いい特技だ。戦力としては考えないでくださいって事なので、戦闘中は荷物の護衛を任せる事にした。

 

 フラーレは「傷を治す魔法」と「味方を固くする魔法」が使えるらしい。バフとヒール担当だな。後衛として積極的に戦闘に出て貰う事にした。

 

 ウェンディは「罠をはずせる」のと「扉をあけれるらしい」まあ盗賊っぽいな。行程の安全確保が主ってとこだ。戦闘は弓がメインの遠距離攻撃ってことらしい。なるほどな、単純な攻撃魔法使いより行程の安全もついたほうがいいってことだな。これは自薦もすごかったらしいが、エルザのファインプレーだな。

 

 さて、ある程度話は聞き終えたので、飯が終わったら外に出て連携をある程度試しつつ、モンスターの巣へ行きますかね。

 

 

 

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 あ と が き

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 ※1水を振る

 :(温度を上げて話を促す、水先案内と水を振ると温度が上がるからきてるっぽい主人公の造語)

 

 

 もし作品が少しでも面白いなって思ったらハートやコメや☆をお願いします。

 誤字脱字が記載者の認知による把握漏れという状況から抜け出せない部分もありマスが

 暖かく見守りつつご評価いただければ幸いです。

 

 気軽に書いているので気軽に良し悪しを教えてもらえると助かります。

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