第6話 エルザ無双!!・・・いちかく

 あれから一月位か、この世界で暦を見たことが無いので、正確には分からんが大体30日位過ぎた。

 

 その間、俺とエルザは街近辺のモンスターを倒しつづけていた。今もそうだ、見敵必殺って勢いで見つけたら斬る叩きつける叩きつけるって具合でだ。

 

 ん?なんで叩きつけるが2回あるのかって?そりゃあエルザが棍棒2本持ちだからだよ。絵面が凄ぇぞ、超絶美少女が黒っぽい染みがついた棍棒を2本持って暴れる姿ってのはよ。ちなみに見敵必殺を時代錯誤とか騒いで批判してたやつらはきっと「敵」なんだろうなと思うぜ。ははは。

 

 まあ余談はいいとして、討伐自体は順調だ。ひとつの弊害を除いては。

 

 「おーほっほっほ、マスター!スライムですわ!!撲殺ですわ!!」

 

 弊害?あれだ、超絶美少女が長いこと討伐ばっかりしてた所為で、いい感じに好戦的に仕上がりやがった。・・・ん?最初からか?まあいい。

 

 にしても両手持ちか、たしか上位職のスキルだったと思うんだがなぁ。スタータウンで使いこなすかぁ。まあ「つよさ」なんて見えるわけもねぇし「転職」なんてのもねぇからいいか。

 

 「おぅ、やってしまえ。近隣の平和の為だ」

 

 「任されましたわ!!ロンですわ!!」

 

 ロン?なんだそりゃ、もちロンって事か?・・・んあ?麻雀か?ピンフかよ!まじでエルザの思考回路は、何処と何処がどう繋がってるんだろうな。

 

 「おう、いっとけいっとけ」

 

 エルザは飛び掛かってきたスライムに、右手で振り下ろす棍棒と左手で振り下ろす棍棒が交差するような打撃を出している。

 

 「必殺ばってん叩きですわ!!」

 

 スライムは交差した叩き込みを受け、S字にひしゃげたまま討伐された。一確だな、しかしもうちょっと格好良い技の名前はねぇのかよ。まあバッテンだけどもよぉ。

 

 で、なんですっかり任せきってるかって言うと、さすがに一月も近隣でモンスター退治をしていると、出て来るモンスターにも慣れるし楽に倒せんだよ。決して横着してるわけじゃねぇ。っとあそこにもいるな。

 

 その辺にあった石ころを掴んで、おおきなカラスに投げつける。・・・命中っと。

 

 しかし倒しても倒しても減らねぇ。こりゃ確かに世界の危機かもしれねぇな。延々と生まれるだか、沸いて来るだか知らねぇが増え続けるモンスターと水際でやりあってても仕方ねぇ。元を叩かなきゃだめだな。

 

 丁度、日も暮れて来たし一度街へ戻るか。晩飯でも食いながら、近辺のモンスターの巣みてえなのを聞き込みするとするか。

 

 「エルザ、そろそろ帰るぞ。街に戻って作戦会議だ」

 

 「はいマスター!倒したモンスターをお願いします」

 

 「ああ、まかせとけ」

 

 ちなみにだ、倒したモンスターの類を処理するのは俺がやっている。とりたて理由があるわけじゃねぇが、しいて言うなら売る時に高く売れるようにって位か?まあ道具屋と交渉する俺がやったほうが合理的ってだけだ。


 とりあえず何に使うかわからんが、買い取ってくれるスライムの粘液と、魔物動物系の血の処理をして、大きな布袋にぶちこんでいく。めんどくせぇ。だが、そのうちに便利な入れ物でも出てくんだろう。もしくは荷物係でもお供にして歩くとかでもいいけどな。

 

 「エルザ、手加減も覚えような。売れる部分も消し飛んでるやつが多いぞ」

 

 「でも必殺技は大事ですわ!!ワタクシいっぱい編み出したんですわよ!」

 

 そりゃ一月も雑魚相手にしてりゃ、戦闘中に暇にもなるしな。

 

 「そうだな、他にもあったな」

 

 「ええっ!!まずはダイナミック回転式の・・・叩くのですわ・・隙を見て・・こうやってこう!・・ですわ・・時々・・・」

 

 実演付きで説明してるが、説明の途中で熱演に変わって陶酔しちまって、こっちを忘れてやがる。とりあえず討伐後の処理を終わらせちまうか。

 

 「・・やがてドッパーンですわ!マスター聞いてましたんですの?」

 

 ほう、ですの口調も安定で織り込むんだな。お嬢様としてレベルあがってんな。

 

 「はいはい、ドッパーンだよな」

 

 「さすがですわ!ドッバーンじゃなくてドッパーン、この違いは大事ですわ!!」

 

 何に拘ってるんだよ、関西のおっさんかよガーッと行ってダーッとなってクルッや。みたいな説明聞いてるのと変わらんわ。

 

・・・・

 訳わからん事を言ってるエルザを適当にあしらいつつ街へ戻った。

 

 帰りの足でそのまま俺は道具屋へ売りさばきに行くから、エルザは宿に先に行くように言っておいた。あいつ未だにスライムが取り込んだものを核だとか言い張るからな。

 

 何度も違うと言っても「核に違いありませんわ!」って感じで聞く耳も持ちやしねぇ、意外と強情な奴だ。俺はその件に関して会話と心の扉をそっ閉じしておくことにした。女ってのは夢の中でしかごめんね素直じゃなくてって言えないって話だしな。

 

 諸々の成果物を売り払って、小金持ちになった所で必要な備品として「やくそう」と「どくけしそう」を10個づつ買っておいた。武器に関しては一月の間に何度も交換してるので今はいい。なんにせよ、今となっては弱いと感じるモンスターが相手だろうが、命のやりとりをしてる以上は備えておいて悪いことはねぇだろう。


 さて各種雑務も終わったし宿に戻るとしますかね。

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